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企業も働き手も「ウインウイン」

 まず人件費の削減が可能になる。複数の工場で優秀な技能者を共有できるようになるからだ。一方の技能者にとっても、複数の工場をかけ持つことでより多くの仕事をこなせる。例えば、技能者5人分の仕事を一人でこなせるようになれば、企業がこの技能者に2人分の給与を支払ってもコストを大幅に削減できる。企業にとっても働き手にとってもメリットの高い仕組みになる可能性がある。

 ここでこんな声が聞こえてきそうだ。「全て自動化すればそもそも工場に人が必要なくなるのでは?」と。確かに遠い未来はそうなるかもしれない。だが、企業がする全ての投資はコストに対してメリットが上回って初めて意義がある。

 生産ラインの自動化で先端の取り組みを進める産業用ロボット大手、安川電機の熊谷彰執行役員はこう断言する。

 「どんなに自動化やAI(人工知能)の導入が進んでも、人手でしかできない仕事は残る。機械は人に言われたことしかできない。何もないところから何かを生み出すことは人にしかできない」

 自動化してもコストが見合えばいいが、前述のメンテナンスのような仕事は機械化するよりも人間がやった方が安い場合が多い。そこで遠隔ロボットが活躍するのだ。

 そしてもう一つ、企業が遠隔ロボットを開発する理由がある。それは「人の喜び」のためだ。NSSOLの場合は、遠い場所で人が働けるようにすることで、人の安全を守ったり働く場を提供したりできる。トヨタの場合は、災害地で人が安全に人助けができるようにすることで、誰かの役に立つ喜びを与えられるようになる。助けられた人や家族もさぞ喜ぶだろう。テレイグジスタンスの場合は、リビングルームにいながらどこへでも行ける喜びを与えられる。どのケースも「人を場所という制約から解放する」ことで喜びを提供できるのだ。

 実はこれ、日本のモノづくりに希望の光を与える要素技術にもなり得る。その理由は、1月28日号の日経ビジネス特集「製造リショアリング」で紹介している。