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遠隔ロボに欠かせない通信技術

 こうした動きの背景には、次世代通信技術「5G」が近々、導入されることがある。遠隔にいるロボットに人と同じ滑らかな動きをさせるには、大容量かつ遅れのない通信技術が欠かせない。特に工場などで作業させようとすると、指の動き一つからロボットが再現し、かつロボットが感じた視覚や嗅覚、触覚といった五感をそのまま人へ伝達する必要がある。次世代通信技術なしには実現できない世界なのだ。

 このためいずれの企業も通信大手の協力を得て実証実験を進めている。NSSOLとトヨタはNTTドコモと、テレイグジスタンスはKDDIと組んでいる。

 そもそもなぜ企業は今、アバターを開発しようとしているのか。

 一つは人手不足の解消だ。少子高齢化により働き手の絶対数が減る中で、高炉現場のように過酷な環境下の仕事にはことさら人が集まりにくくなる。遠隔ロボットがあれば、涼しいクーラーの効いた自宅でも仕事ができるため働き手も増えるだろう。

 これだけではない。NSSOLで遠隔ロボットを開発する小川哲男氏はこんな構想を打ち明ける。

 「人が遠隔で働けるようになれば、日本の工場で働くメンテナンス担当者など、技能者の活躍の場が増える。遠隔ロボットさえ現地に用意しておけば、世界のどこかの現場で設備に不具合が生じた時に、日本の技能者がロボットに乗り移って問題を解決できる」

 工場の現場では、一人の作業者が何台もの機械を掛け持ちで動かすことを「多台持ち」と言うが、遠隔ロボットを使えばグローバルでの「多工場持ち」が可能になる。生産設備のメンテナンス作業は、IT(情報技術)だけで解決できないことが多い。実際に人が現場へ行き、機械部品の調整などをして初めて解決することがほとんどだ。そこで遠隔ロボットが活躍するというわけ。

 こうなれば、企業に与えるインパクトは大きい。