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 日本企業が国内に工場を新設する動きが広がっている。シチズン時計のグループ会社が約50年ぶりとなる時計工場を長野県に設けるなど、久しぶりに国内工場を建てる「ぶり企業」も少なくない。賃金の安い新興国に工場を移転してきた日本の製造業。生産回帰の波は本物か。

約50年ぶりの時計工場を2016年12月に稼働したシチズン時計マニュファクチャリング(写真=尾関 裕士)

 新興国などに拠点を移す「オフショアリング」に対し、国内回帰は「リショアリング」と呼ばれる。日経ビジネスの1月28日号特集「製造リショアリング」で紹介したが、新興国の賃金上昇や現地工場での品質管理の難しさ、原油高による輸送コストの上昇などを背景に、製造業で今、リショアリングの動きが出ている。日本貿易振興機構(ジェトロ)の明日山陽子氏によると、2014年ごろから、国内への設備投資が活発になっているという。

 もっとも、製造リショアリングは日本に限った話ではない。米国や英国でも共通している。

 米国の場合は、00年代半ばからシェールガスの生産が商業ベースで可能になってきたことが大きい。米国内のエネルギーコストが低下し、製造業が再び米国内でものづくりを展開する基盤ができた。

 加えて、「オバマ政権、トランプ政権ともに製造業の復活を目指しており、税制改革と各種政策を進めた点で共通している」と明日山氏は指摘する。米国第一主義を掲げるトランプ政権では17年12月に大型の法人税減税などを実施。国内投資の活発化を促した。

トランプ米大統領も法人税減税などで製造業の国内回帰を促す(写真:Bloomberg/Getty Images)

 英国の場合、3月末に迫る欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)後の状況は見通せないものの、これまで国内回帰のためにワンストップでさまざまな情報やサービスを支援する政策を促進してきた。

 製造技術の革新も先進国でのリショアリングを後押しする。ロボット技術やデジタル技術の進化に伴い、省力化が進み、人件費を抑えながら効率よくモノづくりができるようになってきたのだ。

 低賃金を強みに成長してきた新興国は岐路に立つ。賃金上昇でコスト競争力が相対的に低下。「世界の工場」の中国でもロボットの導入など省人化投資が活発になっている。

 賃金格差の縮小で、製造条件が世界で同じようになるなかで、日本への投資はこれからも続くのか。あるいは、リショアリングは日米英以外の国にも広がるのか。今後も注目だ。


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