全1098文字

 証券会社などM&A業界の関係者が日立製作所に熱い視線を注いでいる。ポートフォリオ(事業構成)の入れ替えに不断に取り組んでおり、優良な事業や子会社でもコア事業でないと判断すれば躊躇なく外部に譲渡してきたためだ。売却と買収を繰り返す日立は、日本のM&A業界で台風の目のような存在だ。

 「日立詣では欠かせないよ」。投資ファンド業界に人脈を持つ外資系証券マンは言う。日立が売却する案件をいち早くつかみ、買い手となりそうな投資ファンドに持ち込んでファイナンシャルアドバイザー(FA)として雇ってもらうためだ。

 日立物流、日立キャピタル、日立工機、日立国際電気、そしてクラリオン。日立は近年、名のあるグループ企業の株式を次々に売却してきた。売上高ではなく利益率を優先し、コア事業に該当しないと判断すれば売却もいとわない。東原敏昭社長は2021年度に営業利益率10%の目標を掲げ、国内外で900あるグループ会社を500社程度まで減らす方針を掲げている。

東原社長兼CEOは、900あるグループ会社を500社程度まで減らす方針を掲げている。

 18年末にスイスのABBから送配電などの電力システム事業を約7000億円で取得すると決めたことも子会社売却を一段と加速させるとの見立てにつながっている。手元資金が18年9月末時点で1兆円強あるとはいえ、買収による財務悪化を限定的なものにとどめる必要があるためだ。

 「順番は分からないが絶対に今年も日立から売り物はいくつか出る」。多くの投資銀行マンやファンド関係者は案件を心待ちにしている。売却可能性がある企業をざっと挙げてもらうと、日立ハイテクノロジーズ、日立化成、日立オートモティブシステムズ、日立建機、日立金属といった顔ぶれが並んだ。

 グループ内の名門で「御三家」と呼ばれた日立化成や日立金属も売却候補として取り沙汰されるようになった。いずれも経営危機ではなく、技術力も高い。どこが売りに出たとしても買い手に事欠かないことが予想される。

 日立のように選択と集中を加速させるのはグローバル経営の潮流だ。利益が出ている事業やグループ会社も、その水準が目標に満たなかったり、中核事業とシナジーを生みにくかったりすると売却対象になる。株主の発言権が強まり、資本効率を意識した経営を企業が迫られている結果でもある。

 売られる子会社や事業部からも、親会社から投資資金など経営リソースを多く回してもらえないなら、自分たちを必要とする別の企業に移った方が幸せだ、という声も聞かれるようになった。悲壮感は漂わなくなっている。

 日経ビジネスの1月21日号特集「2019年M&A大予測」では、事業や子会社を売却する大企業の動きを追った。パナソニックなども候補になっている。