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2019年元旦。セブン&アイ・ホールディングス傘下の百貨店、そごう・西武の広告がネットを中心に炎上した。NHK連続テレビ小説に出演している女優、安藤サクラさんの顔にクリームパイが当たった瞬間の写真を採用。性別にかかわらず、自分らしく生きることを訴える狙いだったが、ネットなどでは「暴力的」「女性差別」といった意見が相次いだ。

 西武百貨店はかつて、糸井重里氏がコピーを書いた「じぶん、新発見。」「おいしい生活。」といった広告に象徴されるように流行を作り出す存在だった。だが、2019年の年頭に打った広告を待っていたのは炎上だった。消費と流行をけん引し、「小売りの王様」と呼ばれた百貨店が時代と乖離してしまったことを示しているとも言える。

そごう・西武の主力店舗の1つ、西武渋谷店

 そごう・西武の苦境は数字の面でも明らかだ。セブン&アイの2018年3~11月期の連結営業利益は前年同期比2.9%増の3042億円だった。3~11月期としては6期連続で最高益を更新した。国内と海外のコンビニエンスストア事業が稼ぎ頭となる中、主要事業会社の中で総合スーパーのイトーヨーカ堂とともにそごう・西武が営業赤字となり、足を引っ張っている。そごう・西武の3~11月期は前年同期の1億4000万円の営業損失から赤字幅を拡大し、9億3000万円の赤字だった。

 通期の営業利益も15年2月期までは100億円を超えていたが、17年2月期は43億円、18年2月期は50億円にとどまる。日経ビジネスの1月21日号特集「2019年M&A大予測」でも触れた通り、セブン&アイがそごう・西武を売却するのではという観測がくすぶり続けるのは、そごう・西武の業績が振るわないためだ。

 セブン&アイは05年12月、そごう・西武(当時はミレニアムリテイリング)の買収を発表した。16年に会長を退いた鈴木敏文会長が本格的な巨大流通コングロマリット(複合企業)への第一歩として手に入れ、その後の百貨店を中心とした流通再編の引き金を引いた。

 だが、当初からコンビニやスーパーとの相乗効果は疑問視されていた。食品や生活雑貨を売るコンビニやスーパーとアパレルが主力の百貨店では扱う商品が違うだけでなく、百貨店はアパレルメーカーなどに商品から売り場の運営まで任せることが多く、企業としての運営や文化も異なる。