日経ビジネスの1月21日号特集「2019年M&A大予測」では、独自の取材に基づき、大型M&Aを巡る様々なシナリオを紹介した。業界関係者へのインタビューでは「電力会社の再編が始まる」「アクティビストは沈静化する」など、激変の2019年を予想するコメントが相次いだ。M&A助言、レコフの稲田洋一社長、さわかみ投信の澤上篤人会長、東京理科大学大学院の橘川武郎教授、シティグループ証券の江沢厚太マネジングディレクターの4氏へのインタビューを掲載する。
中小型M&Aの隆盛続く レコフ・稲田洋一社長

2019年の国内M&A市場は一層活性化し、今後10年で最盛期を迎えるはずだ。70歳前後を迎えた団塊の世代の経営者が引退を考える時期に入っている。一方、後継者不足は深刻だ。同業や関連企業による事業承継をテーマにした買収が顕著に増えてきている。財務省のデータによると、再編や廃業などを通じて、15年末~25年末までに国内企業が83万社減るという予測もある。
最近では、赤字企業だけでなく黒字経営の中小企業も買収の対象となってきている。業種別で多いのは建設関連。足元では、20年の東京オリンピック・パラリンピックや首都圏でのオフィスビル建設などで建設需要が旺盛だ。技術者不足が深刻となっており、人材確保を目的とした買収が多い。
中小規模の病院や診療所の案件も増えている。最新の医療機器は性能が優れているが非常に高額で、多くの病院では設備投資が経営の負担となっている。医師や看護師はしっかり労務管理をしないと他の病院へ簡単に移ってしまう。難しい経営の舵取りを負担と感じる院長は多く、他の医療グループなどに事業を譲るケースが増えてきた。
地域別では、九州での案件がより活発化するとみている。九州新幹線の開業に伴い、地域内でも交通アクセスが格段に向上し、鹿児島と熊本や、佐賀と長崎など、県をまたいだM&Aが増えている。昨年九州で開催したグループのセミナーでは3000人が集まった。新幹線の整備は今後も続き、更なる越境案件が増えると見ている。
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