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アクティビストと呼ばれる物言う株主が存在感を増している。彼らは経営陣を突き上げて株主還元や再編を求め、株価を引き上げようとする。かつて世間を騒がせた村上世彰氏の動きも再び活発になってきた。

村上世彰氏。かつては「異端児」と受け止められていた。(写真=共同通信)

 17年近く前、村上ファンドを率いる村上世彰氏を取材していた際、「異端児だな」と感じた覚えがある。当時、村上氏はアパレル大手の東京スタイル(現TSIホールディングス)と株主総会でのプロキシーファイト(委任状争奪戦)の真最中だった。時価総額を上回るほど潤沢な内部留保をため込んでいた東京スタイルに、大幅な増配や自社株買いを求めていたのだ。

 資本の論理から考えると「企業価値を高めるために正しいことを求めている」(村上氏)という主張は、その通りだろう。だが当時、ほかの株主から同調する機運があまり感じられなかった。「ロジックは彼の主張の通りなのかもしれない。でも強欲な村上氏に賛同したと思われたくもないしね」。ある大手運用会社の首脳はこう語っていた。

 村上氏は市場、世の中に登場するのが早すぎた。この時の村上氏は結局、プロキシーファイトで敗れている。それから17年あまり。村上氏の行動は何も変わっていないようだ。日経ビジネスの1月21日号特集「2019年M&A大予測」でも触れた通り、資本の論理を御旗に、資本効率がいいとは言い難い様々な企業の株を買っては、経営陣に論戦を吹っ掛けている。

 最近もレノやC&Iホールディングス、オフィスサポートといったファンドは実質的に村上氏が率いているとみられる。現代版「村上ファンド」とも言える様々な投資主体を使い、新明和工業や日本郵船などの株を買い増している。「日本企業を変えたい」。もし村上氏に今、動いている動機を聞けば、昔と何も変わらない答えが返ってくるのだろう。

 しかし、村上氏を取り巻く環境は変わった。アクティビストの存在は村上氏だけではなくなった。カール・アイカーン氏や米エリオット・マネジメントを率いるポール・シンガー氏など、ときに村上氏より激しい態度すら見せるアクティビストが日本企業の株主となり、要求を突きつける時代になった。

 そして決して「物言わぬ株主」だった国内の機関投資家も、コーポレートガバナンス・コードが改定されたこともあり、資本の論理に見合った要求なら、それがたとえアクティビストの要求であろうが賛成するようになった。「モノの言いよう」で反感を買うことはいまだにあるかもしれない。だが村上氏の論調は決して異端児ではないのだ。

 そして現代のアクティビストたちは、単なる株主還元などの要求にとどまらず、もっとスケールの大きな業界再編などの「ディール」を求めることも多い。電子部品専門商社の黒田電気がアジア系投資ファンドに買収されて昨年、上場を廃止したのも、半導体商社のUKCホールディングスが同業のバイテックホールディングスとの経営統合を昨年決めたのも、ともに村上ファンドの突き上げを受けてのもの。アクティビストの存在がM&A(合併・買収)につながるケースがどんどん増えている。