新型コロナウイルス禍による日本の航空機産業への打撃が鮮明だ。日本航空宇宙工業会(東京・港)によると、2020年度の国内の航空機生産額(速報値)は民間需要が約6000億円消失し、19年度比32%減の1兆2634億円になった。民間航空機は長期的に見れば成長産業だが足元では厳しい。目先の数年は需要変動の小さい防衛への依存が強まりそうだ。

 「中小企業では週休3~4日というところもある」。同工業会の村山滋会長(川崎重工業特別顧問)は5月下旬の記者会見で、大幅に縮小した市場への危機感をにじませた。航空機生産額に宇宙分野(約3200億円)を合わせた航空宇宙生産額で見ると、6年ぶりに2兆円を下回る規模となった。

 航空機生産額の内訳では、防衛需要が前年度比1%減の5057億円、民間需要が同44%減の7576億円。民間向けでは米ボーイング「787型機」など中大型機の生産減少が響いた。防需と民需の比率は4対6で、前年度の3対7から防需に大きく傾く形となった。

コロナ禍に伴う中大型機の減産によって民間需要が大きく落ち込んだ
コロナ禍に伴う中大型機の減産によって民間需要が大きく落ち込んだ

 世界の主力機が減産されたことは国内勢にとって大きな打撃となった。コロナ禍によって需要の減った787は、「想定よりも回復が遅い」(大手重工幹部)。787の機体部品の35%は日本企業が納めるが、川崎重工業は20年度の787の航空機分担製造品が77機分と前年度比で半減した。

 航空機産業の窮状を背景に、同工業会は雇用調整助成金の特別措置延長や防衛調達の支払い前倒しなどを働きかけてきたが、企業も自助努力を余儀なくされている。

21年度以降「かなり厳しい」

 IHIは民間機エンジン部門の人員を、哨戒機などで稼働の高い防衛部門に割り当てている。三菱重工は20年から航空関連の工場の人員を、自社の原子力関連の工事に振り向けたり、トヨタ車体(愛知県刈谷市)に送り込んだりしている。

 国際航空運送協会(IATA)は世界の旅客需要がコロナ前の水準に戻るのは24年と予測する。国内の航空機生産について、同工業会は「21年度以降の動向はかなり厳しい状況が想定される」とする。

 民間航空機を構成するエンジンと外側の機体はビジネスモデルが異なる。航空機が運行すればメンテナンスなどで収益が出るエンジン事業は徐々に需要が戻り始めているが、航空会社の新規投資が必要な機体そのものの新造の回復は時間がかかるため、一言で航空機産業といっても、回復スピードに濃淡が出そうだ。

 三菱重工はエンジン事業の23年度の売上高が19年度比横ばいに回復する一方、機体部品事業は同3割減と予想する。

 明るい材料がないわけではない。欧州エアバスは5月下旬に最新の生産計画を発表。小型機中心に需要が回復するとみており、主力で737MAXの競合機種にあたる小型機「A320」シリーズは、21年末に月産45機へと増やしたうえで、23年6月までにはその1.4倍の64機に増やすとした。同シリーズは日本では機体部品をジャムコなどが、エンジン部品はIHIなど重工3社が納めている。

 ただ、国内では三菱重工をはじめボーイングとつながりの大きい企業が多く、そのボーイングはコロナ以外に品質問題にも苦しんでいる。

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