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LIXILグループのCEOに復帰した瀬戸欣哉氏が6月26日、日経ビジネスの独占インタビューに応じた。昨年10月末に解任されたが、6月25日に開催された株主総会で瀬戸氏らの株主提案が会社提案に勝利し、再び経営の舵(かじ)を握る。ガバナンス不全を正すために立ち上がった瀬戸氏は、「勝たなければいけない戦だった」と振り返った。
日経ビジネスの独占インタビューに応じたLIXILグループの瀬戸欣哉氏。昨年10月末にCEOを解任されたが、株主総会で株主に支持されて返り咲いた(写真:稲垣純也、以下同)

約8カ月ぶりにCEO(最高経営責任者)に復帰しました。早速、今日(6月26日)は朝8時半から、従業員を集めてタウンミーティングを開いたそうですね。そのとき、どんな気持ちでしたか。

瀬戸欣哉・LIXILグループ社長兼CEO(以下、瀬戸氏):素直に、みんなの顔が見えてうれしかったです。この仲間ともう一度仕事ができるというのは、素晴らしいことだ思いました。

 なんというか……、結構、大変な時期もありましたから。そんな時に、従業員からメールをもらったり、(社内向けSNSの)Workplaceで応援してもらったりしたので、まずはお礼を言いたかったです。みんなの顔を前にした瞬間、僕は心の中で感動していました。

タウンミーティングでは、どんな質問が出ましたか。

瀬戸氏:最初の質問が、「ニックネームで呼んでもいいですか」というものでした。理由は分かりません。「キンキンとキンちゃんと、どっちがいいですか」って。びっくりしましたよ(笑)。

 それと、「会社は誰のためのものですか」という質問もありました。「所有」という意味では会社は株主のもので、株主に利益を還元するにはもうけなければなりません。しかし、もうけるためには、従業員にお客様と向き合ってもらう必要があります。

 結局、経営者にできることは、従業員への働きかけなんです。経営者の最大の仕事は、従業員にいい仕事をしてもらうために、進むべき方向を示し、意欲を与えることしかありません。

先ほど、「大変な時期があった」とおっしゃいましたが、一番、苦しかったことはなんですか。

瀬戸氏:苦しいというのは、精神的なものですよね。今まで、常にチームで仕事をしてきたのに、急に独りになってしまったのが苦しかったです。独りで仕事をするのは慣れていなかったので、大変でした。毎日投資家と話をしたり、メディアと話をしたりして、時にはがっかりすることもありますよね。その「がっかり」をぶつける相手がいませんでしたから。

自分のプライドが許さなかった

組織力も資金力もある会社に対して、個人で戦いを挑んだわけですが、改めて、なぜ、そこまでしたのですか。

瀬戸氏:私は従業員に対して、「LIXIL Behavior」という行動指針を示していました。人間として一番大切なことは、正しいことをすることだと。「正しいこと」とは、法律とか倫理とか、そういうことだけではありません。自分自身の頭で考えて、本当に正しいと信じられることだと話してきました。

 それにもかかわらず、正しくない方法でCEOを交代させられて、会社のためにならないことが起きたというときに、それを放っておくことは、自分のプライドが許しませんでした。

 また、機関投資家のサポートも大きかったです。「本来なら、会社は株主全体のもの。それがコーポレートガバナンス(企業統治)の原則なのに、特定の株主に利益供与をするような行動によって会社の可能性を低くしてしまっている。LIXILのガバナンスを改革をすることが、日本の会社全体を良くすることになる」といった意見には、勇気をもらいました。