LIXILグループのガバナンス問題で、会社側が次期取締役候補に選んだコニカミノルタ取締役会議長の松崎正年氏がインタビューに応じた。LIXILは5月30日、会社側の社外取締役候補者7人連名のメッセージを発表。その中で、松崎氏が次期取締役会議長候補者であることを明かしている。松崎氏は、「私が社外取締役に選ばれた意味は大きい」として、自ら主導してLIXILのガバナンスを立て直したいとの意欲を語った。

LIXILグループのガバナンスを巡る問題で、会社側の取締役候補となったコニカミノルタ取締役会議長の松崎正年氏。コニカミノルタのガバナンス改革を主導してきた経験がある(写真:稲垣純也、以下同)
LIXILグループのガバナンスを巡る問題で、会社側の取締役候補となったコニカミノルタ取締役会議長の松崎正年氏。コニカミノルタのガバナンス改革を主導してきた経験がある(写真:稲垣純也、以下同)

LIXILグループの次期取締役候補になった経緯を教えてください。

松崎正年氏(コニカミノルタ取締役会議長):ゴールデンウイーク前の4月下旬、(LIXILグループ指名委員会委員長の)バーバラ・ジャッジさんの代理人から仕事で付き合いのある人を介して、そういう依頼があると打診されました。ジャッジさんは「日本企業のガバナンスに対する信頼を取り戻すのに協力してほしい」ということで、経営トップを経験していてガバナンス改革にも取り組んできた私に引き受けてほしいということでした。

 私はコニカミノルタの取締役会議長ですし、ほかに3社の社外取締役もやっているので、これ以上、引き受けてもきりがないと考えて、これまでこのような依頼はすべてお断りしてきました。しかし、今回は先ほどお話したような理由だったので、むげに断るわけにもいきません。そこで、検討はさせていただくが、取締役会の開催がコニカミノルタも含めてほかの会社と重なったらダメとか、あまり多くの時間を割くことを期待されては困るということをお伝えしました。

 社外取締役を引き受けるとき、私は3つのことを大切にしています。1つ目は、トップがガバナンスを良くすることに関心があるかどうか。2つ目は経営の執行と監督が分かれているかどうか。執行も担うのであれば、その会社の事業のことを詳しく理解していないといけませんが、監督だけなら自分の経験を生かしてお役に立てます。そして3つ目が、期待されていることが明確になっているか。

 今回の場合、LIXILは指名委員会等設置会社なので、2については明白です。3は先ほどお話したような理由でした。分からなかったのが1です。潮田さん(洋一郎・会長兼CEO=最高経営責任者)に直接聞くわけにもいきませんし、面識もありませんから。そこで態度を保留にして、会社としてどのような社外取締役を選び、どのようなメッセージを発信するのかを自分の目で確かめることにしました。

 5月13日、発表された社外取締役候補の顔ぶれやその理由、特に、現取締役が全員退任するという大きな決断を見て、会社としてガバナンスを再構築しようという意思を確認できました。

 そしてその日の夜、指名委員会の総意として、改めてお願いしたいという連絡があり、引き受けることにしました。

瀬戸欣哉氏がCEOから解任された経緯を巡るガバナンスの混乱は、何が問題だと思いますか。

松崎氏:まだ社内に入って事実関係を確認している状況ではないので、はっきりとは言えません。しっかりと手続きを踏んでいるのであれば、指名委員会が機能したとも言えるでしょう。しかし、やはりメディアや機関投資家の皆さんが「おかしいのではないか」と思うのは、そのプロセスをしっかり踏んだように見えない、別の言い方をすると、プロセスを踏んだということをきっちりと説明していないというところが問題だと、私は考えています。ガバナンスで大切なのは、説明責任です。堂々と説明できないような意思決定をすべきではありません。そのために社外取締役がチェックするのです。

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