フードテック分野の米新興企業が今夏にも日本に上陸する。スチームを使ってラーメンを調理する自販機型のロボットで、カップラーメンなどより「生」に近い具が楽しめる。新型コロナウイルスの感染拡大で飲食店の営業は不透明。日本の“夕飯難民”にラーメン自販機は根付くか――。

午後8時すぎの都内オフィス。仕事をしているとおなかが空いてくる時間だが、コロナ下の飲食店の営業制限により、開いている店はない。近所のコンビニに行くのも面倒だ。そんな「夕飯難民」にこのサービスは便利かもしれない。
8月の日本進出を目指しているのが、米フードテックスタートアップの「Yo-Kai Express(ヨーカイ・エクスプレス)」だ。社名は突然現れる妖怪のように、「いつでもどこでも食べられる」(アンディ・リンCEO=最高経営責任者)というコンセプトに合わせてこのネーミングだという。
製品名は「Octo-chef(オクトシェフ)」。自動販売機型のシェフロボットで、タッチ方式の画面でメニューを選ぶとカップ入りの冷凍ラーメンをスチームで加熱し、最短50秒程度で調理して提供する。冷凍のため、メンマや肉など具材や麺の「生感」がカップラーメンより楽しめるという。通常の自動販売機と同様、在庫が減れば補填されていく。
米国では30種類近いメニューを提供しており、豚骨やキムチなどのラーメンにとどまらず、ざるそば、点心、エスニック料理、キューバ料理さえ提供している。豊富なバラエティーは小さなフードコートのようだ。同社独自のラーメンメニューの日本での価格は650~750円を想定している。
オフィスビルがターゲットに
ターゲットはコンビニやスキーリゾート、病院、駅などだが、特に需要がありそうなのが、地上に下りて食事するのがおっくうな高層のオフィスビルや敷地の広い車の製造工場などだ。すでに米国では大手自動車メーカーの工場や動画配信大手のオフィスのほか、マリオット・インターナショナル系列のホテルにも導入されているという。「深夜にホテルで働いている人などが利用している」(リン氏)
日本の4都府県では4月25日から5月11日まで緊急事態宣言の期間となり、飲食店の営業は制限される。その後の見通しもままならない。料理の宅配サービスは配達に数十分かかる上、人の手を介する接触がどうしても起こる。その点、自販機はコロナ後の社会に受け入れられやすいのかもしれない。食堂の開いていない時間帯の利用や場所を移動する時間がない忙しいビジネスパーソンにとっては都合がいい。
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