居酒屋大手のコロワイドが定食チェーン大手の大戸屋ホールディングス(HD)に買収提案したことが日経ビジネスの取材で明らかになった。大戸屋HDが買収提案を拒否したため、コロワイドは大戸屋HD経営陣の刷新を目指した株主提案を14日の取締役会後に公表する構えだ。経営陣を刷新した後に、TOB(株式公開買い付け)と第三者割当増資の組み合わせにより大戸屋HDを子会社化する考え。事実上、敵対的と言える買収劇が始まろうとしている。

両社の経営権争奪戦が始まりそうだ
両社の経営権争奪戦が始まりそうだ

 焼肉店「牛角」や回転ずしの「かっぱ寿司」などを傘下に持つコロワイドは、大戸屋HDの約19%の株式を保有する筆頭株主。昨年、大戸屋の創業一族から株式を譲り受けた経緯がある。コロワイドは昨年末から水面下で大戸屋HDに対して事実上の買収提案を繰り返してきたが、大戸屋HDは独立経営の維持を訴え、買収提案に抵抗してきた。度重なる交渉でも話が進まないため、コロワイドは強硬手段に訴える方針を固めた。

 コロワイドは4月14日に開く取締役会で、6月の定時株主総会に向けた大戸屋HDの取締役候補者を12人提案するという株主提案を出すことを決議する。12人中5人は現経営陣などから選ぶとしているが、7人はコロワイド側の人選だ。大戸屋HDの窪田健一社長は取締役としての続投は認めるものの、社長ポストからは退任を求める。大戸屋HD側はこうした株主提案を拒否する公算が大きく、その場合は経営陣の刷新を巡りプロキシファイト(委任状争奪戦)が繰り広げられることになりそうだ。

 コロワイドが経営陣の刷新に成功した場合、その後にTOBと第三者割当増資の組み合わせにより、持ち株比率を50%強にまで高め、連結子会社化する考えだ。大戸屋HDの上場は維持する方針とみられる。仮にプロキシファイトが大戸屋HDの勝利に終わって経営陣の刷新に失敗した場合でも、コロワイドはその後に再び臨時株主総会を請求して経営陣刷新を求めたり、敵対的TOBを開始したりする方針で、買収への意思はかなり強い。

 コロワイド側はこれに先立ち、3月下旬から大戸屋HD株主に対して、「コロワイドグループ入りへの賛否」を問うアンケートを実施していた。コロワイドによると回答数の9割以上から賛同の意見をもらったというが、このアンケートに答えると3000円相当の食事券がもらえるため、大戸屋HD陣営からは「卑怯(ひきょう)な手口」との声もあがる。

 コロワイドは大戸屋HDがグループ入りすれば、原材料の共同調達やセントラルキッチンの有効活用などでシナジーが見込めると主張しているが、大戸屋HD側は店内調理を特長としてうたっていることから、経営手法が違うことを理由に抵抗するとみられる。

 また、コロワイドは大戸屋HDがグループ入りした際には同社が現在実施している株主優待制度を大幅に拡充することも決めている。例えば500株以上保有する株主は現在、6500円分(3年以上保有の場合は7500円分)の食事券が贈呈されているが、これを4万円にまで引き上げるとしている。

 大戸屋HDの経営自体は苦しい。20年3月まで既存店売上高が14カ月連続で前年割れ、2020年3月期の連結業績見通しは5億3000万円の最終赤字を見込んでいる。さらに新型コロナウイルスの影響もあり業績は一段と下振れする公算が大きい。株主が現経営陣を支持するのか、それともコロワイドの提案や、その後の子会社化を支持するのか。激しい議決権争奪戦が始まることになりそうだ。

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