昨秋起きたLIXILグループの瀬戸欣哉社長の事実上の解任劇について、機関投資家の間で不信感が広がっている。

 普段はメディアの取材などに応じない英機関投資家マラソン・アセット・マネジメントの髙野雅永・東京事務所日本調査担当がインタビューに応じ、「この状況は看過できない。見過ごすことは株主責任、投資家責任を放棄していることになる」と、LIXILのガバナンス体制を批判した。「株主としての権利行使を視野に入れている」と語り、選択肢として議事録の開示や臨時株主総会の開催を請求することもあり得るという。

日経ビジネスの取材に応じた英機関投資家マラソン・アセット・マネジメントの髙野雅永・東京事務所日本調査担当
日経ビジネスの取材に応じた英機関投資家マラソン・アセット・マネジメントの髙野雅永・東京事務所日本調査担当

 マラソン・アセットは日本株で約1兆6000億円を運用しており、本部はロンドンにある。LIXIL株は、前身会社時代を含め約16年間保有している長期投資家で、保有比率で5%を超えたこともある。現在は5%未満だが、「それなりのポジションを持っている」という。「アクティビストではない長期投資家が大きな懸念を抱いていることを、全てのステークホルダーに認識してもらいたい」と髙野氏は話す。

 マラソンが不信感を募らせているのは、日経ビジネスが報じた瀬戸氏のCEO(最高経営責任者)退任の経緯と、会社側の説明が異なる点だ(関連記事:日経ビジネス2018年11月7日「不可解な瀬戸氏の“解任劇”」)

 本誌の取材によれば、昨年10月26日に緊急で指名委員会が招聘された。そこで「瀬戸からの辞意の申し出があった」との説明が指名委員にあり、その後の取締役会で後任として11月1日付で創業家の潮田洋一郎氏が会長兼CEOに就任し、社外取締役だった山梨広一氏がCOO(最高執行責任者)に昇格する人事を決定した(山梨氏は19年4月1日付で社長兼COOに)。

 だが、瀬戸氏が潮田氏から「指名委員会の総意」で辞めてもらうことになったと伝えられたのは10月27日。それ以前に、瀬戸氏は辞意を表明したことはない。

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