全1996文字

日経ビジネスは、新たな試みを始めます。1つのテーマについて、電子版、雑誌記事、ミニイベント、大型セミナーなどを展開し、読者の皆様とともにより深掘りしていく複合型メディア「日経ビジネスLIVE」です。

>>日経ビジネスLIVE「HRX 異能人材を生かす」の関連記事一覧へ


 プロ野球の名選手であり名将でもあった野村克也さんが亡くなりました。突然の訃報は大きなニュースとなり、テレビでは連日のように特集が組まれました。

 南海ホークスのテスト生の出身ながら、選手として戦後初の三冠王となり、監督としてはヤクルト時代に4度のリーグ優勝と3度の日本一を達成するなど、輝かしい成績を残されました。

 ただ、これほどまでに野村さんの死を悼む声が上がるのは、単に成績が良かったからだけが理由ではないでしょう。監督時代、「野村再生工場」という異名を取ったように、「終わった」とされた数々の選手をよみがえらせました。人の才能を引き出すのに長けた、その手腕に人は魅力と憧れを感じるのではないでしょうか。

 いわゆる「野村語録」も強く印象に残りました。

 「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」

 偶然に勝つことはあっても、負けるときは負けるだけの理由がある。肥前平戸藩の藩主で剣術の達人でもあった松浦静山が書いた『常静子剣談』の一文から引用されたものでした。

 「金を残すは三流、名を残すは二流、人を残すは一流」

 これは明治の元勲の1人、後藤新平の言葉である「金を残す人生は下策、事業を残す人生は中策、人を残す人生こそが上策なり」を野球人として少しアレンジしたものでしょう。「人を残すは一流」に野村さんの思いを感じます。

 日経ビジネスが今年2月10日号で掲載したインタビューでも、人づくりに対する強い思いを語っていました。

 「僕は人材育成というのは、『見つける』『育てる』『生かす』ことだと思っています」

 そしてこう続けます。

 「そういう意味では、もっと多くの才能を育てたいけど、育てるって難しいね。才能を見つけるのも難しいけど育てるのはね」

 「見つける」「育てる」「生かす」――

 どんな組織でも常に頭を悩ませるテーマですが、ビジネスの世界では今ほどその課題が重くのしかかっている時代はないのかもしれません。

 経験によるスキルアップが期待できた製造業中心の経済成長が過去のものとなり、デジタル化による産業構造の転換は、加速度的に進化していく新技術への対応を企業に迫っています。副業解禁で働く個人が持つ会社への帰属意識は変わり、AI、ビッグデータ、IoT、量子コンピューターといった最先端の人材は奪い合いとなっています。

 今春闘の論点として経団連の中西宏明会長は、新卒一括採用や年功序列型賃金といった日本型雇用システムの見直しを打ち出し、トヨタ自動車の豊田章男社長も「終身雇用の維持は難しい」と発言してきました。