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「敵対的」という日本語はおかしい

敵対的TOBは今後、日本でも増えるのでしょうか。

 一般的には増えていくと考えるのが自然だろう。そもそも世界のTOBを見ると、金額が大きい過去トップ10の案件のうち7つが敵対的TOBだ。海外では敵対的なディールは極めて普通のことと言える。ただ敢えて言うと、「敵対的」という日本語はおかしいのかもしれない。海外のディールでは当初は対立していても条件引き上げで最終合意に至るケースも多い。条件が合っていないから最初は敵対的になるが、買収価格が高くなったら手を握ることは普通だ。まだ合意していないだけ、という意味では「未合意TOB」とでも言い換えた方が正確なのかもしれない。

 最近、(指数連動で運用する)パッシブ投資家が増えていることも敵対的買収の成功を高めるだろう。パッシブ投資家はスチュワードシップ・コードに署名すると議決権を行使しなければいけない。人数が少なく案件ごとの精査がしにくいパッシブ投資家は、経済合理性にノーと言いにくいからだ。従来、日本では「顧客が企業を育てる土壌」があった。しかしこれからは欧米のように「投資家が企業を育てる土壌」が広がってくるだろう。

仮に伊藤忠がデサント株の4割を保有した場合、伊藤忠と残り6割の株主の利害関係をどう考えればいいのでしょうか。デサントは過去、伊藤忠にとって都合のいい取引を強要された、と主張しています。これが事実ならば、伊藤忠以外の株主は損害を受けたことにもなりかねません。

 残り6割の株主の利益というのは大きな論点になる。本来は、伊藤忠が残り6割の株主の利益を損なうことをしたらダメということだ。日本は法整備が遅れているが、海外では法によって少数株主が支配株主から保護されている。米国では親子上場が極めて稀だ。利益相反の可能性がある取引をする場合は、少数株主の利害を損なわないことを証明する必要があるため、そもそも親子上場を行わない。例えばデラウェア州では独立委員会での承認が必要だ。フランスでは議決権の10%超を持つ株主とその企業の取引は、取締役会と株主総会での承認が必要とされている。