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 伊藤忠商事によるデサントへの敵対的TOB(株式公開買い付け)を専門家はどう見ているのか。企業価値評価などに詳しい一橋大学大学院の経営管理研究科、野間幹晴准教授は「伊藤忠は自社の株主に今回のTOBの合理性を説明しなければいけない」と指摘する。

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野間幹晴(のま・みきはる)氏
一橋大学大学院経営管理研究科准教授。一橋大学商学部卒、同大学大学院商学研究科修士課程修了。同大学院で博士後期課程修了。2002年横浜市立大学商学部専任講師、03年同大学助教授。04年10月、一橋大学大学院国際企業戦略研究科助教授、07年同准教授、18から現職。10年から11年まで、米コロンビア大学ビジネススクール・フルブライド研究員。現在、経済産業省企業報告ラボ座長、バンダイナムコホールディングス社外取締役。13年7月から14年8月にかけて経産省の「持続的成長への競争力とインセンティブ~企業と投資家の望ましい関係構築」プロジェクト(通称、伊藤レポート)の委員も務めた。

伊藤忠のデサントに対する敵対的TOBは、現在3割の保有株数を4割まで引き上げるものです。成立はするのでしょうか。

 TOB価格にはプレミアム(上乗せ幅)が50%もついている。(金融庁が求める)フィデューシャリー・デューティー(顧客本位の業務運営)の観点からすると、機関投資家の運用者の立場で応じないという選択肢は難しいだろう。また(機関投資家の行動指針である)スチュワードシップ・コードの導入で機関投資家に投資行動に伴う説明責任が問われるようになった。(言い分が食い違う)両社の開示資料だけでは、投資家はどちらが正しいかは判別することはできない。そのため50%のプレミアムに応じない理由を説明することがこれまた難しいだろう。

伊藤忠はデサントの現経営陣の戦略に疑義を唱えており、デサントの企業価値拡大機会をこのまま見過ごすことは自社の株主からも批判されるから今回の行動に移した、とも説明しています。伊藤忠の株主は今回のTOBをどう思うのでしょうか。

 デサントの企業価値を高めなかったら自社の株主の利益にならないから、という伊藤忠の言い分には納得できる。だがそれだけでは50%のプレミアムを乗せた理由については説明できていない。200億円を投じて買い増すのが10%分。デサントの2019年3月期の純利益見通しが65億円だから、200億円の見返りが6.5億円だけだ。これは非合理的で資本コストを無視していると思われても仕方がない。伊藤忠が自社の株主にこの点をどう説明するのか注目している。