2022年10月、中国は共産党の党大会で習近平国家主席の3期目を決めた。習氏への権力集中が一段と進むなか、日本の最大の貿易相手国である中国経済はどうなるのか。東京財団政策研究所の柯隆氏に2023年の展望を聞いた。
(聞き手は三田敬大)

中国は2020年の新型コロナウイルス禍の震源地でしたが、経済面ではなお正常化に至っていません。対中ビジネスを手掛ける企業にとって、23年に気をつけるべきことは何でしょうか。
柯隆(以下、柯):まず、今の中国経済(編集部注:インタビューは11月上旬に実施)で一番悩ましいのは、ゼロコロナ政策を解除するかしないか。10月の党大会が開かれる前には、多くの識者が「党大会が終わればゼロコロナ政策を徐々に後退させるのではないか」と言っていました。
実際に党大会が終わっても、主要大都市ではむしろゼロコロナ政策が強化されています。フォックスコン(台湾の鴻海精密工業の製造子会社)でさえ、30万人の従業員を抱える工場が大混乱に陥りました。
ゼロコロナをやめない理由は2つあるとみます。1つは人々を行動制限する便利なツールになっていること。これを手放したくないのでしょう。2番目は巨額のマネーが流れていること。PCR検査試薬を生産する製薬会社、検査を実施する医療関係者、列を作るスタッフやボックスを製造する関連工場などのPCRサプライチェーンが、ある種の既得権益集団になっているのです。
ゼロコロナ政策を続けることで経済が犠牲にされています。中国経済で一番厳しいのが、いわゆるレストランや洋服の路面店。失業率の急上昇に表れています。
中国は生産年齢人口が減少して人手不足のはずなのに、なぜ失業率がこれほど上がるのかといえば、最も雇用に貢献する中小企業がゼロコロナでやられてしまっているからです。しかも今回は特に若年層の失業率が上がっており、不動産市場の軟調につながっています。(編集部注:22年12月に入り中国はゼロコロナ政策を緩和したが、今度は感染者数の増加で経済や社会に混乱が生じることになった)
中国の若者は結婚に当たって、女性からマイホームを求められます。日本人なら賃貸から始めますが、中国は賃貸市場が育っていません。貸す方と借りる方が契約をきちんと守る文化が根付いていない社会なのです。どうしても多くの人は親から援助をもらうなど、無理して買うことになります。
こうした購入が減っています。加えて、住宅ローンを抱えた人がリストラされたり、給料が下がったりすると返済が滞ります。中国の不動産バブルの崩壊懸念が根強いのはこういう背景です。
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