9月に急逝した前社長の布施孝之氏の下で、販売を伸ばしてきたキリンビール。しかし、事業利益率の改善はまだ道半ばだ。2021年7~9月期は約10%で前年同期から約3ポイント下がった。そうした中、22年1月1日付で堀口英樹氏がキリンビール社長に就任する。

 キリンホールディングス(HD)社内で「緻密に計画を立てて静かに実行するタイプ」と評される堀口氏は、グループ内企業のトップを歴任しており、経営者としての経験は豊富だ。16年にキリンビバレッジ社長に就任した後は「選択と集中」を断行し、15年12月期に1.5%だった事業利益率を20年12月期に8.6%まで引き上げている。

 堀口氏が社長に就く人事を11月に発表した磯崎功典キリンHD社長は、堀口氏に「新たな収益構造改革に取り組んでもらう」と期待を語った。国内ビール市場が縮小する中でどのような一手を打つのか。堀口氏に聞いた。

<span class="fontBold">堀口英樹(ほりぐち・ひでき)氏</span><br>現キリンHD常務執行役員兼キリンビバレッジ社長。2022年1月にキリンビール社長に就任する。1962年生まれ。85年慶応義塾大学商学部卒業、キリンビール入社。98年に米マサチューセッツ工科大学に留学。2009年に米ウイスキー会社のフォアローゼズディスティラリー社長に就任したのを皮切りに、14年に小岩井乳業、16年にキリンビバレッジの社長に就いた。社長として4社目となるキリンビールでは事業利益率の改善に注力する(写真:北山 宏一)
堀口英樹(ほりぐち・ひでき)氏
現キリンHD常務執行役員兼キリンビバレッジ社長。2022年1月にキリンビール社長に就任する。1962年生まれ。85年慶応義塾大学商学部卒業、キリンビール入社。98年に米マサチューセッツ工科大学に留学。2009年に米ウイスキー会社のフォアローゼズディスティラリー社長に就任したのを皮切りに、14年に小岩井乳業、16年にキリンビバレッジの社長に就いた。社長として4社目となるキリンビールでは事業利益率の改善に注力する(写真:北山 宏一)

22年1月からキリンビール社長に就任されますが、市場環境やコロナ禍の先行きが見えにくい状況です。市況をどのようにみていますか。

堀口英樹氏(以下、堀口氏):コロナ禍の動向次第で市場環境が大きく変わるとみています。特に、足元ではオミクロン株の感染が世界で拡大しているので、第6波が来ると市場が縮小してしまうのではないかと懸念しています。

 需要が回復傾向に向かうのは22年の後半辺りからではないでしょうか。とはいえ、現時点では不透明ですね。経済回復のためにはインバウンド再開が早い方がいいのですが、そのためには新型コロナウイルスの治療薬開発や免疫ケア意識の向上などを積み重ねて、出入国に伴う各種の規制などが解除される状況に持っていく必要があります。

キリンビバレッジでは商品点数の多い清涼飲料水の「選択と集中」を実施して事業利益率を改善しました。しかし、17年からの「布施改革」で既に商品の絞り込みや商品力を強めてきたビール事業は、新たな手法が必要ではないでしょうか。

堀口氏:キリンビバレッジではSKU(受発注・在庫管理を行うときの最小単位)を絞ることで全体のオペレーションを改善しましたが、確かにこの手法をそのままビール事業に当てはめることはできないでしょう。私はクラフトビールなどに収益改善のポイントがあるとみています。これらの高付加価値商品は収益性も高いからです。

21年3月に発売したクラフトビール「スプリングバレー豊潤<496>」。若者を中心に販売が伸びている
21年3月に発売したクラフトビール「スプリングバレー豊潤<496>」。若者を中心に販売が伸びている

 「キリン 一番搾り」のような基盤商品をがらりと変えることはありませんが、高付加価値領域のマーケティング戦略に特に力を入れるとともに、収益構造を見直して強化します。ビールの新しい楽しみ方の提案として家庭向け専用ビールサーバー「ホームタップ」のサービス(毎月定額の支払いで自宅にビールが届くサブスクリプションサービス)もさらに広げたいですね。レモンサワーなどの「RTD(レディ・トゥ・ドリンク)」分野も拡大させます。こうした取り組みを積み重ねてキリンビール全体の収益性を高めたいと考えています。

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