自動車業界で生き残るのは誰?

自動車業界の行方について、さらに詳しく聞きたいと思います。EVシフトが進む中で、誰が生き残るのでしょうか? 生き残りの条件は何だと思いますか。

ゴーン氏:自動車業界で生き残るのは誰なのか? まずEVの米テスラがますます強力な会社に変わっていくと私は感じています。

 一方で、トヨタ自動車や日産のような自動車メーカーは、脱炭素に向けた自動車開発で、EV、ハイブリッド車、水素燃料電池車(FCV)などを含むある種の全方位戦略を実行してきました。

 激しい競争の中で生き残りたいなら、その中で最初のオーディション(審査)は何になるかを考える必要があります。私は自動車産業の次の10~20年は、EVの時代になると思っています。

自動車産業では「EVのテスラがますます強力になる」と語るゴーン氏(写真:ロイター/アフロ)
自動車産業では「EVのテスラがますます強力になる」と語るゴーン氏(写真:ロイター/アフロ)

 トヨタやホンダなどがFCVに投資していることは知られています。しかしFCVは長期的な戦略と言えるでしょう。水素を燃料に使う量産車はいつか本格的に市場に出ていくでしょうが、今はEVです。それがナンバーワンであることは株式市場が証明しています。マーケットは今日、テスラが自動車産業の勝者であると評価しています。

 世界の自動車メーカーの株式時価総額を合計すると、そのおよそ半分をテスラが占めています。テスラの販売台数は自動車産業の1%程度ですが、業界全体の時価総額の5割ほどを占めているのです(編集部注:21年10月末時点の時価総額では、テスラ1社で世界の主要な自動車メーカーの合計に匹敵する水準にあった)。ですから、市場はテスラが勝者だと言っているのは間違いありません。

 そして、圧倒的な時価総額があることはテスラに大きな利点をもたらします。「何でも買う」ことができるからです。イーロン・マスク氏は、日産、ルノー、三菱自動車を全部買うことができます。3社の市場評価は極めて低いからです。3社を合計しても、自動車メーカー全体の株式時価総額の1割にもなりません。

 率直に言って、「株式市場は正しい」と私は思います。日産、ルノー、三菱自動車が今日何をしているのかを見て、あなたはこれらの会社に投資したいと思いますか? もちろん「ああ、3社の株はものすごく安い」と言って投資する人はいるかもしれません。

 それでも、大きくて(株価が)安いからといって、それが良いビジネスだというわけではありません。安いものには、安いだけの理由があるのです。それは、3社連合の自動車の品ぞろえが不十分で、ビジョンがなく、経営が凡庸だからです。

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