「人を外見だけで判断してはいけない」、「外見より中身で勝負」といわれる。確かに、人は見かけによらないものだ。一方で、ビジネスパーソンの「外見」が、場合によっては仕事上のリスクになりかねないことがアンケート調査で分かった。調査を行った「外見リスクマネジメント」を提唱する石川慶子氏と、帝京大学文学部の吉野ヒロ子氏に聞いた。

まず、石川さんが提唱している、ビジネスパーソンの「外見リスクマネジメント」について教えてください。

石川慶子氏(以下、石川氏):「外見リスクマネジメント」を提唱したのは2015年です。もともと経営者やリーダー層に、インタビュー対応や記者会見の訓練を行うメディアトレーニングという仕事をしていましたが、話の中身を相手により効率的に伝えるためには、言葉だけでなく非言語の部分も重要になると思ったのです。

石川慶子(いしかわ・けいこ)氏
広報コンサルタント、シン社長、日本リスクマネジャー&コンサルタント協会理事。東京都生まれ。東京女子大学卒。参議院事務局勤務後、1987年より映像制作プロダクションにて、劇場映画やテレビ番組の制作に携わる。1995年から広報PR会社所属。2001年独立し、危機管理に強い広報プロフェッショナルとして活動。

 例えば、トレーニングの際、「言葉と表情が一致していないので注意してください」とアドバイスすることが多いのですが、どう変えればいいか、具体的な改善策まで提示したいと考えて研究を始めました。

 ここでいう外見とは、顔や容姿のことではなく、表情、視線、服装や身だしなみ、姿勢や立ち方、動きや身ぶり手ぶり、ヘアメークといった、生まれつきのものではなく自分でマネジメントができることです。また、単に服装の色などでイメージを変えるということではなく、ビジネス上で自分が言いたいことを相手にきちんと伝えるためにはどう外見をマネジメントすればいいかを考えることです。

 リスクマネジメントとは「危機の予測と回避」のことです。外見がリスクになりそうだと予測できた場合に、どう回避するかを考えます。外見がリスクになるのは、言葉と外見が一致しない場合で、自分は「こう見られたい」のに、相手にはそう見えていないケース。典型的な例は、「笑顔の謝罪」のように、謝罪しているのに謝罪の意図が伝わらない場合です。

身だしなみは組織への愛着に影響する?

吉野さんと一緒に調査をすることになった理由は何ですか。

石川:外見リスクマネジメントの経験を通して実感していることを、数字として示したいと思い、吉野さんにお願いしました。

吉野ヒロ子氏(以下、吉野氏):私自身にも動機がありました。ある日、講義が終わった後、バスを待っていたら冷たい雨が降り出しました。困っていたら、後ろに並んでいた全く知らない学生2人が「自分たちは傘をそれぞれ持っているから、1本使ってください」と傘を貸してくれたんです。大学の専任講師になった最初の年で、慣れなくて大変な思いをしていたこともあり親切が身に染みました。その後も研究のヒントをもらうなど、助けられることがたくさんあって、「学生のためになることはできる限りやろう」と考えるようになりました。

吉野ヒロ子(よしの・ひろこ)氏
帝京大学文学部社会学科専任講師(広報論・広告論)、内外切抜通信社特別研究員、日本広報学会理事・博士(社会情報学)。博士論文「ネット炎上を生み出すメディア環境と炎上参加者の特徴の研究」、著書に『つながりをリノベーションする時代』(弘文堂・共著)ほか。

 それから、大学の外で講演する際、話の内容を充実させるのはもちろん大事ですが、専門家として来場者になるべくいい印象を与えたいとも思うようになりました。それは、学生のために帝京大学の評判に少しでもプラスになることをしたいという気持ちがあったからです。

 でも、私は化粧も服も髪も「もっさり」しがちで、何をどう変えたらいいのか分かりませんでした。困っていたときに日本広報学会で石川さんと意見交換をする機会がありました。石川さんは外見がコミュニケーションにどう影響するかについての数字がないと困っていました。そこで「私が調査をして数字を出しましょう、その代わり、私の外見の整え方を教えてください」と提案すると、二つ返事でOKしてくださったのです。

 私が大学以外の場でも、相手にいい印象を与えられるようにしたいと思ったのは、自分が勤める大学の学生のために何かしたいという思いが動機でした。従って、ビジネスの場で身だしなみを整えるという行動には、組織への愛着や連帯感が影響している可能性があると考え、組織内広報の実施状況と組み合わせて調査することにしました。調査のテーマは、「組織内広報と外見リスクマネジメントの関連について」です。

続きを読む 2/3 年収が高い人のほうが自分の外見に気を使っている

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