楽器を入れる箱に隠れてビジネスジェットで密出国するという映画のような逃亡劇から2年。日産自動車のカルロス・ゴーン元会長が日経ビジネスの単独インタビューに応じた。役員報酬の過少記載や会社の資金流用などの罪を問われており、今はレバノンで逃亡生活を送る。ゴーン元会長は事件について何を思い、日産や自動車産業をどう見ているのか、複数回に分けてお届けする。1回目は事件についてどう考えているかについて話を聞いた。(聞き手は山崎良兵=日経ビジネス電子版編集長、大西綾)

日本から国外に逃亡して約2年がたち、2021年12月に日本で「世界で勝てない日本企業 壊れた同盟」を出版しました。なぜこの本を書いたのでしょうか。

カルロス・ゴーン氏(以下、ゴーン氏):(18年11月に逮捕され、19年12月に日本から逃亡するまで)とても長い間、私は自分の声を外に発信することができませんでした。その間、日産と日本の検察による一方通行の情報に基づいた報道ばかりが広がっていきました。「人格抹殺」キャンペーンとも呼べるような執拗な攻撃があり、私は「強欲な独裁者」として描かれるようになりました。

 とりわけ私が問題視しているのは、自分の身を守ることを許さない日本の「人質司法」です(編集部注:被告人が黙秘または否認している限り、長期間勾留し、保釈が容易ではないこと。法務省は自白を強要しておらず、批判には当たらないとしている)。検察側は私を逮捕する前に日産の関係者と会い、逮捕の何カ月も前から準備していました。そして逮捕後は、私が悪の権化であるかのようなキャンペーンを展開しました。

オンラインインタビューに応じるゴーン氏
オンラインインタビューに応じるゴーン氏

 私だけでなく、(元代表取締役の)グレッグ・ケリー氏も逮捕され、日産から追い出されました。しかし役員報酬過少記載の事件では、当時の日産の西川廣人社長も、有価証券報告書に記載されなかった報酬の支払い名目を記した文書にサインしていたとされています。そうであるなら西川元社長も逮捕されるべきで、不公平だと思います。

 私は日本に本社を置く日産を17年間経営してきました。グローバルで約15万人の従業員がいて、とりわけ日本で多くの人が働いていました。私は危機に瀕した日産を立て直し、グローバルなアライアンスを実現しました。その経営を学ぼうと、ビジネススクールなどの教授が様々な角度から研究してきたほどです。

 しかし18年の逮捕以降、世界は一変し、全ては私に不利な方向に進みました。人格攻撃を受け、独裁者であるかのように報じられ、検察や一部の日産の関係者によって捏造(ねつぞう)された私のストーリーが流布されてきました。だからこそ、この本を書こうと思ったのです。この本は、私自身が事件について初めて明確な意見を自ら発信する機会となりました。

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