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英語の民間試験や国語、数学の記述式問題の導入で大混乱している大学入試改革。本来、日本の競争力を高めるために大学入試改革、ひいては教育改革は必要だったはず。なぜ、ここまでこじれてしまったのか。国内トップクラスの進学校である開成中学校・高等学校の柳沢幸雄校長と、全寮制のインターナショナルスクールを立ち上げたユナイテッド・ワールド・カレッジISAKジャパンの小林りん代表理事が、改めて改革の必要性を語り合う。対談の後編は、教育改革に求められる企業の役割や、「公正とは何か」を問う。

開成中学校・高等学校の柳沢幸雄校長(左)とユナイテッド・ワールド・カレッジISAKジャパンの小林りん代表理事(写真:的野弘路、以下同)

前編から読む)

大竹剛(日経ビジネス):ここまでは、英語4技能を問う民間試験や数学、国語の記述式問題の導入を巡る混乱などについて、柳沢さんと小林さんのご意見を聞いてきました。ここからは、大学入試改革から視野を広げて、企業や社会の果たす役割などについてもお聞きします。

 まず、大学入試改革、広く言えば教育改革において、企業はどのような役割を果たすべきだと考えていますか。

柳沢幸雄氏(開成中学校・高等学校校長、以下、柳沢氏):大学入試改革を進めるためにも、変わらなければならないのは経済界です。例えば、経済界が新卒を採用するときに、英語を聞く、話す能力のある人の採用を重視すれば、途端に大学の教育は変わり、高校、中学も変わっていきます。

小林りん氏(ユナイテッド・ワールド・カレッジISAKジャパン代表理事、以下、小林氏):経済界は変わり始めていると思います。生きるか死ぬかの瀬戸際にいますから。海外にもっと出ていかなければならないし、そのためには英語を話す能力は必須です。切羽詰まった課題として捉えていらっしゃる経営者も多いので、変わり始めたらスピードは速いと思います。

 でも、私たち中等教育をやっている身としては、やはり大学の改革がものすごく大切です。私たちがどんなに教育のやり方を変えても、大学が変わらなければその先へバトンをつないでいくことができません。逆に言えば、大学入試が変わらなければ、初等、中等教育は変わりません。

 事実、UWC ISAK Japanの卒業生の9割は海外の大学に進学します。少人数での議論中心の授業を通じて、多様な価値観や情報を理解しながら、自分の頭で考えた意見を発信することを要求され、それに慣れてきた生徒たちにとって、日本の大学の大半は、物足りなく映るようです。

柳沢氏:開成では10人弱が海外の大学に進学します。高校1年の段階で海外の大学に進学を希望しているのは1割くらい、40人弱ですが、最終的には10人弱になる。一番の理由がお金です。

 私は、政府は“現代版の遣唐使”をつくるべきだと思います。毎年1000人分の奨学金を用意する。1人年間350万円。だいたい、海外留学に必要な費用の半分です。そうすると4年間で1400万円、1000人だと140億円になります。

 年間140億円を国が負担して毎年1000人を海外に送れば、全世界の100校ぐらいに留学生は散らばるでしょう。彼ら、彼女たちが日本に帰ってきたら、ものすごく社会が変わっていくと思いませんか。