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スイスのノバルティスが開発した白血病治療薬「キムリア」。2019年5月に厚生労働省が日本での製造販売を承認。公定価格(薬価)は過去最高の3349万円に決まった。その後の販売状況はどうなのか。日本法人のがん部門トップを務めるブライアン・グラッツデン氏に聞いた。

ブライアン・グラッツデン氏
1993年米ペンシルベニア大学卒業、97年米サウスカロライナ大学国際ビジネス学修士。97年からドイツのバイエル薬品(ドイツ、オーストリア、米国)で営業・マーケティングなどを担当、2001年からスイスのノバルティスの米国法人でグローバルマーケティング、05年から07年までノバルティスの日本法人でオンコロジー新商品企画などを担当。その後、ノバルティスのオーストリア・スロバキア、オーストラリア・ニュージーランドのオンコロジー事業責任者、韓国、オーストラリア・ニュージーランドのカントリープレジデントなどを経て、18年8月から日本法人ノバルティスファーマの常務取締役兼オンコロジージャパンプレジデント。

約3500万円の高額医薬品である抗がん剤の「キムリア」を8月に日本で発売しました。販売状況は?

 キムリアの発売に当たって最も大事なのは、患者の安全性を確保した上で有効性を提供することでした。このため、当社が品質や安全性の面で支援し、トレーニングを行って認定した医療機関だけに提供することにしています。現在、認定されているのは7施設です。これまでに治療を提供したのは全体で数人です。キムリアの治療を受ける機会を日本の患者に提供できるようになったのは喜ばしいことですが、一歩ずつ、慎重に進めているところです。

治療を受けたい患者に対して十分に提供できていますか。

 特に供給を制限している訳ではありません。キムリアという製品の性質上、個別に2、3カ月の時間をかけて製造も行わなければならないので、少しずつ進めている感じになっているのだと思います。安全で高品質な医療を提供するためには医療機関側の体制なども考えなければなりません。低分子でできた通常の医薬品とは全く異なることを感じています。ただ、我々としてはベストな力を使って、キムリアを必要とする患者に届けていかなければならないと感じています。

治験の段階では重い副作用が発生していました。発売後に問題になるようなことは?

 重い副作用があるからこそ、医療機関を認定し、知識を提供して治療できる環境を整えてやってきました。それによって副作用にも十分対応できていると考えています。

今後、認定する医療機関は増やしていきますか。

 医療機関や学会などと話し合いながら増やしているところですが、いつまでに何カ所にするという計画は特にありません。日本国内で年間に200人から250人発生するとみられる患者に治療を受ける機会を提供していくのが目標なので、それに十分な医療機関に展開していければと思っています。

現在、患者から採取した細胞をノバルティスの米ニュージャージー州にある製造施設に届けて製造しています。そこでの製造能力は十分なのでしょうか。

 パートナーと組みながら、グローバルで製造施設を増やしていく計画です。今はまだニュージャージー州でしか作っていませんが、製造施設が増えれば、我々がどこで作るのが最適かを考えていけます。日本では神戸医療産業都市推進機構の細胞療法研究開発センターに委託してキムリアの治験薬を製造していますが、将来、商業生産に適した体制ができているかどうかを判断して委託することがあるかもしれません。

治験薬というのは、キムリアの対象となる疾患を増やしていくためのものでしょうか?

 その通りです。日本も含めたグローバルで治験を行っていて、2019年の終わりまでに8つの治験を始めている予定です。幾つかの種類の小児の血液がんなどについて治験を行っている他、まだ治験は始めてはいないものの、より多くの疾患に適応を広げていくことを検討しています。