全6120文字

 スポーツ科学の研究や筑波大学硬式野球部の監督を通して野球のあり方を考えてきた川村卓准教授。2019年4月に発足した日本高等学校野球連盟(高野連)の「投手の障害予防に関する有識者会議」に携わり、選手の体を守り、ひいては野球を守る活動を続けてきた。その有識者会議が、11月20日に投手の投球数制限を含むガイドラインをまとめた。29日の高野連の理事会で審議され、20年の選抜高等学校野球大会から導入される予定だ。野球人口の減少で「このままでは野球をする子どもがいなくなる」と危機感をもつ川村准教授は、この変革で、肘や肩に障害をもつ選手が多い学童・中学野球へ与える好影響も期待する。その川村准教授に話を聞いた。

川村卓(かわむら・たかし)
筑波大学体育系准教授。筑波大学硬式野球部監督。幼時から大人まで体系的な指導方法について研究。主に野球の投動作、打撃動作の分析、ゲーム分析などを研究してきた。2019年4月に発足した日本高等学校野球連盟(高野連)の「投手の障害予防に関する有識者会議」に副座長として参画。提言の取りまとめに活躍した。

高野連の「投手の障害予防に関する有識者会議」の最終的な答申がまとまり、2019年11月20日に提出されました。高野連が主催する大会の期間中の試合を対象に、1人の投手が投げられる総投球数を、1週間で500球以内とする投球数制限などが提示されています。来年の選抜高等学校野球大会から導入されます。18年12月に新潟県高野連が投手の1試合100球の投球数制限を導入すると発表しながら、高野連から“待った”がかかったこともあり、簡単には結論が出ないかと思っていました。

川村卓筑波大学准教授(以下、川村准教授):確かに反対意見は多くありました。第3回の有識者会議の時に合わせて、全国から理事長クラスの方に集まってもらいましたが、7割くらいの方が反対されました。

 ただ、高野連の中には、投球数制限など、選手を守るための何らかの措置が必要だという意見は以前からあったようです。どうにかしないといけないという問題意識はあったのです。その意味で、新潟県高野連の「1試合100球制限」という意見は有識者会議の発足のよいきっかけになったと思っています。

 それでも、第1回の有識者会議では投球数制限について賛成、反対の両論が出ていました。ただ、第2回と第3回で流れが変わり、今回のガイドラインがほぼかたまって答申となりました。

 有識者会議の立ち上げに関わった高野連の竹中雅彦事務局長の存在も大きかったです。竹中さんは、それ以前にも18年のタイブレーク制の導入などにも関わられた方です。残念ながら第3回の会議の後、10月16日に亡くなられてしまいました。突然だったので非常にびっくりしました。

投球数制限導入を巡る動き
2018年12月 新潟県高野連が、新潟県大会で投手の投球制限導入を表明
2019年3月 新潟県高野連、投球数制限の導入を見送ることを発表
   4月 「投手の障害予防に関する有識者会議」発足
   8月 全国高等学校野球選手権大会で金足農業(秋田)の吉田輝星投手の投球数、6試合で881球に
   11月 「投手の障害予防に関する有識者会議」、最終第4回会合で答申の骨子をまとめる
   11月 高野連理事会、答申案を承認