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 新型コロナウイルスの感染拡大により、インターネットを使った「オンライン授業」に接した生徒や学生が増えた。ネットでの授業には「生徒の理解度が分からない」「コミュニケーションが取りにくい」といった課題を指摘する声も上がった。

 一方、コロナ禍以前からネットを中心に運営してきた高校がある。2016年4月に開校した角川ドワンゴ学園が運営する「N(エヌ)高等学校」(沖縄県うるま市、以下N高)だ。通信制高校の制度を活用した「ネットコース」を設け、「ネット高校」として、現在約1万5000人に学びの場を提供している。

 10月にはN高に続く「S高」を21年4月に茨城県つくば市に開校する計画を公表。設置認可を申請中だ。通信制の制度上、高校卒業資格に必須のカリキュラム「スクーリング」(対面形式での授業)があり、「沖縄県うるま市での宿泊施設の受け入れ可能人数が2万人のため、上限を超える可能性を見越して開校を決めた」(角川ドワンゴ学園)という。

 活動の場がネット中心の部活動がいくつも存在したり、東京大学や京都大学への進学者を輩出したりするなど、通信制高校の中でも独自性が際立つN高。校長の奥平博一氏にオンライン授業の可能性を聞いた。

沖縄県うるま市にある「N高」の沖縄伊計本校

新型コロナの影響で「オンライン授業」が広がった一方で、難しさを指摘する声も多く上がりました。オンラインで授業を展開していくにあたり、理解度や定着度を高めるために工夫していることがあれば教えてください。

奥平博一・N高等学校校長(以下、奥平氏):新型コロナの影響で、対面授業をしていた学校でも「とにかく授業をオンラインで配信しよう」という流れが話題になりました。

 黒板の前で先生が立っている授業をとりあえず流しても、「オンライン授業」は確かに成り立ちます。ただ、リアルな授業でも、先生方は工夫していますよね。オンラインでも工夫が必要なのは同じで、「効果検証」と「視聴確認」の2点がポイントになります。

 効果検証という意味では、例えば10分や15分といった短い時間で区切って、動画の間に「確認テスト」を独自で入れています。

 N高がオンライン授業をしていると言うと、「オンラインで生徒は本当にしっかり見ているのですか」とよく言われます。ですが、インターネットを活用することで、どこまで見たか、動画の後の確認テストでどこまで理解しているかをリアルタイムで把握できます。

奥平博一(おくひら・ひろかず)氏
角川ドワンゴ学園 N高等学校校長

大学卒業後、小中学校で教員として勤務。その後、学習塾で小中学生の受験指導や通信制高校での業務に携わる。2014年、通信制高校の可能性を信じてドワンゴに入社。沖縄に移住し、「N高等学校」の設置・開校準備を担当。

 我々は「この10分を見たか」ということにまでこだわっています。そういう意味では、オンラインの方がしっかり効果検証できるというメリットがあるのです。知識を習得するという観点から見れば、オンラインに欠点があるとは思っていません。オンライン授業をこれから定着させていくためには、こうした効果の側面をしっかり認知させることが大切だと考えています。

 また視聴確認について言えば、「いつ動画を見たか」というログが残ります。学びのスタイルが分かるので、担任の指導にも生きてきます。「もう少し早い時間から勉強をしてみたら」といったアドバイスもできるのです。

通信制のネットコースは、新型コロナによる授業への影響はなかったのでしょうか。

奥平氏:通信制の制度上、登校してもらう「スクーリング」授業も一定時間は必要です。スクーリングは、参加する人数を制限するなど感染対策をしながらの実施になりました。

 ただ、オンラインの授業自体は時間的、地理的要因が影響しませんので、新型コロナという社会的要因があっても大きな影響は受けていません。