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データやデジタル技術を活用して新たな価値を創造し、業務や組織などを変革する「デジタルトランスフォーメーション(DX)」。NTTデータ経営研究所のアンケート調査では、国内の売上高1000億円以上の企業のうち約8割が「DXに取り組んでいる」と回答するなど企業変革の最重要テーマとなっている。取り組んでいるのは企業だけではない。旧来型の仕組みやプロセスが残る自治体も同じだ。「DXで先頭を走る」で公言している湯崎英彦・広島県知事に、その狙いや自治体や行政にとってのDXの必要性を聞いた。
湯崎英彦[ゆざき・ひでひこ]氏
1965年広島県生まれ。54歳。東京大学法学部卒業後、1990年通産省(現経済産業省)入省。2000年3月アッカ・ネットワークスを設立し副社長に。08年アッカを退社し、広島県知事選に出馬。初当選し09年11月に広島県知事に就任。17年に3選を果たし現在3期目。(写真:陶山勉、以下同じ)

広島県は「デジタルトランスフォーメーション(DX)の先駆者になる」と宣言しています。行政・自治体のDXとはどのようなものなのでしょうか。

湯崎英彦・広島県知事(以下、湯崎氏):大きく2つあります。まず、行政のプロセスやサービスの提供方法としてのDX。各種の手続きをオンライン化したり、インフラの維持や教育、医療などをデジタル技術でより効率的なものにしていくという方向です。

 そしてもう1つが、社会全体のデジタル化の基盤や環境を整えていくという意味でのDXです。5年10年先を見ると、産業や社会全体がデジタル化していくことは確実です。農業や医療、交通など行政との接点がある分野も多く、それらを支えていく必要があります。

行政の効率化はこれまでも大きなテーマでした。DXという概念が入ることで何が変わるのでしょうか。

湯崎氏:例えば従来は取れなかったデータが取れるようになるなど、技術やコストの面でできることが以前とは大きく変わってきている点が大きいですね。(次世代通信規格の)5Gの料金体系がどうなるかは不透明ですが、これまで以上に安い接続料で提供されることへの期待感もあります。

 もちろん具体的に何ができるのか、どういうソリューションが生まれるかはまさに模索している最中です。大事なのは、パイオニアとしてその先端を進んでいくこと。

 自治体として考えた場合、もしかしたらパイオニア戦略よりもフォロワー戦略の方が効率がいいという考え方もあるかもしれません。ただ、これからはDXの力を集積していかないと、ほかの誰かが提供するサービスを使っていくだけの存在になってしまう。それでは我々の価値のかなりの部分が損なわれかねません。新たな価値創造をしたい人材や企業に集まってもらうためにも、広島県としてパイオニア戦略を選んだということです。