久恒氏:会社員は、会社では課長や部長などの肩書きで呼ばれ、家庭ではお父さんやお母さんなどと呼ばれることが多いですが、これらの立場には「個」が抜けています。人生は個人としての自分である「個」、会社員としての自分である「公」、夫や父親、妻や母親などとしての「私」の3つで成り立っています(下図参照)。このうち「個」を大切にし、育てていくと、ほかの2つも充実してくるのですが、そうではない人が多い。「個」を大切にしないと、仕事やプライベートでも迷いや悩みが多くなってしまいます。

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「2勝1敗1引き分け」で転職を決めた

仕事に追われ、家族のために時間を使うことが多いと、自分のことは後回しになってしまうのは仕方ない面もあります。何かよりどころになる考え方の柱のようなものがあればいいのですが。

久恒氏:僕は人生は豊かさ、言い換えれば自由の拡大を求める旅だと思っています(下図参照)。肉体的自由である健康を土台に、経済的自由と時間的自由を得て、最終的に精神的自由を求める旅なのです。精神的自由とは、やりたくない仕事をやらない自由、会いたくない人とは会わなくていい自由です。

 ただ、カネとヒマは相反するものです。若く働き盛りのときはカネがあってもヒマがない、年を取るとヒマはあってもカネがないと、年齢によって変化します。転職すると給料が減ることもある。僕はただのサラリーマンでしたから、大学の教授になれない可能性もあり、日本航空を辞めるのは一大決心でした。生活を重視するのか、自分のやりたいことをやるのかを考えて決めました。

 その結果、給料が減って経済的自由という面では「負け」ましたが、時間と精神の自由を得ました。体力的な部分は同じですから、自由の拡大という意味では2勝1敗1引き分けです。家内も不安はあったようですが、今は47歳のときに会社を飛び出してよかったと思っています。やはり、新しい仕事というのは、エネルギーが湧くものですから。

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 転職など節目を迎えたとき、この図を見ながらどこに重点を置くかを考えれば、頭の中が整理できるのではないでしょうか。最近、副業が勧められているようですが、経済的な面だけでなく、違う世界を見ることは、自分の軸をどこに定めるかを見極めるためにも大事です。僕は日本航空勤務時代、梅棹忠夫先生が顧問を務める「『知的生産の技術』研究会」に入ってさまざまな活動をして、仕事と別の自分の軸を見つけて「図解コミュニケーション」の理論と技術を磨くことをライフワークとしていました。

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