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 会社で早期退職の募集があったり、「定年」が見えてきたりなど、第二、第三の人生について迷ったり悩んだりしている50代の会社員は多いだろう。実際、早期退職を募集する上場企業は増えているようで、東京商工リサーチによると2019年1月から9月に希望・早期退職者を募った上場企業は27社、対象人数は1万342人と、6年ぶりに1万人を超えた。

 とはいえ、経済的な不安や家族の事情など、さまざまな条件や制約があったり、ロールモデルが見つからなかったりなどで、次の仕事や生き方を見つけるのは容易なことではない。

 そんなときヒントをくれるのが、遅咲きの人たちの生き方だ。日本航空から大学教授に転身した多摩大学前副学長の久恒啓一氏は、さまざまな偉業を成し遂げた人たちの記念館などを多数巡った結果、「遅咲きの人が多く、どんな人にも苦労や失敗がある」ということを知ったという。誰でもすぐにまねができるわけではないとはいえ、そうした遅咲き人生の醍醐味を知るだけでも「もう終わり」から「さあこれからだ」という気持ちにさせてくれそうだ。

 2019年9月に900館の人物記念館(企画展含む)巡りを達成したという久恒氏に聞いた。

後半生の仕事や生き方に不安や悩みを抱える50代の会社員は多いと思います。「老後2000万円」問題が取り沙汰され、長生きが「リスク」といわれるようになると、なおさらです。

久恒啓一氏(以下、久恒氏):長生きは社会にとってはコストが大きい、個人にとってはリスクが大きいという話ばかり先行しているのは間違っていると思っています。お金などの個別の問題について考えることから始めるのではなく、まず、自分の人生の捉え方を決めるところから始めることが大事です。

 むしろ後半生はチャンスと捉えるべきであるというのが僕の意見です。それまでできなかったことができるようになる実りの時期を迎えるからです。いまだに孔子の人生訓である、40歳は「不惑」、50歳は「知命」という人生観から抜け出せないままでいてはだめです。

久恒啓一(ひさつね・けいいち)氏
多摩大学特任教授。多摩大学総合研究所所長。1950年大分県中津市生まれ。九州大学法学部卒業後、1973年日本航空入社。在職時から「知的生産の技術」研究会で活動。1997年日本航空を早期退職し宮城大学教授に就任。2008年多摩大学教授、2015年より同大学副学長。2019年より現職。著書に『図で考える人は仕事ができる』(日本経済新聞社)、『遅咲き偉人伝』(PHP研究所)ほか多数

自分という「個」が抜けている会社員

 僕は人生100年時代を再定義し、孔子の人生観を1.6倍すべきだと考えています。そうすると、昔の40歳は今の64歳です。50歳は80歳、60歳は96歳です。そのうえで、24歳から48歳が青年期、64歳までが壮年期、80歳までが実年期、96歳までが熟年期、112歳までは大人期(たいじんき)、それ以上は霞(かすみ)を食って生きる仙人期と定義し直してみました。これに従うと、仕事のキャリアは青年期、壮年期、実年期と3期あり、職業は3つ経験できることになります。これを前提としてこれからの仕事や生活について考えると、今やるべきことが見えてきます。

 実際、僕は47歳で日本航空を辞め、壮年期は大学教授でした。これからの実年期は、作家でいくか、起業するか、法科大学院に入って弁護士になるか……などのアイデアがあります。

50代半ばで役職定年を迎えると、やる気が出なくなる人が多いとも聞きますが、そんなことを言っている場合ではないですね。後半生のキャリアについて考える大事な時期になります。とはいえ、1つの会社に長く勤めていると具体的に何をしたらいいのか悩んでしまうのが普通かもしれません。