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 かつて「iモード」などの成功によって、モバイル分野で世界の先端を走っていた日本。だが、スマホ全盛の今日、新たなサービスの創造で日本は世界に出遅れている。シェアリングエコノミーの第一人者である米ニューヨーク大学経営大学院のアルン・スンドララジャン教授は、その原因の1つに、サービス品質への消費者の過剰な期待があると指摘する。

 ただし、5GやAI(人工知能)の分野で、日本は再び輝くチャンスがあると分析。米国などで台頭し始めたシェアリングエコノミーの新たな3分野については「業界を変革する可能性がある」と期待を示した。

アルン・スンドララジャン (Arun Sundararajan)
米ニューヨーク大学スターン・スクール教授、シェアリングエコノミー研究の第一人者。インド工科大学卒業後に渡米。著書『シェアリングエコノミー』(日経BP)。

AI(人工知能)などデジタル技術が急速に進化し、多く企業が対応を迫られています。日本企業の「デジタルトランスフォーメーション」の状況を、どのように見ていますか。

アルン・スンドララジャン氏(米ニューヨーク大学経営大学院教授):日本企業はAIやロボティクス、オートメーションの活用においては非常に大きな機会があると思います。他の国では仕事を奪われるのではないかという労働者の抵抗から、自動化の推進には壁があります。一方、日本は人手不足ですから、そのような抵抗は少ないでしょう。

 可能性があるのは、各企業が自らの事業ドメインで、AIなどを活用してプラットフォームビジネスを作り上げることです。GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン・ドット・コム)は今後5年ほど、新たな事業分野への進出にはこれまで以上に慎重にならざるを得ません。米国や欧州連合(EU)で、独占禁止法の観点から監視が強まっているからです。つまり、GAFA以外の企業にはチャンスとなります。

 日本企業はAIやロボティクスなどに積極投資をし、自らの事業領域でプラットフォームをいかに作り上げるかをもっと真剣に考える必要があると思います。

 一方、消費者サイドでは、モバイル技術への適応ペースが少し遅いように思います。興味深いことに、15年ほど前、日本の消費者はNTTドコモの「iモード」などを使いこなし、世界をリードしていました。しかし、この6〜7年の間に、モバイル技術活用の潮流は、オンラインとオフライン、デジタルとリアルの世界をつなぐ分野に広がりました。ライドシェアやフードデリバリーといった分野です。これらの分野において、日本は出遅れています。

 その背景の1つには、サービス品質に対する消費者の期待がとても大きいことがあると思います。過去30年、日本企業は非常に品質の高い製品やサービスを提供してきましたが、最近のモバイルアプリの品質は、サービス開始当初はそれほど良くありません。プラットフォーム企業は必ずしも品質を保証するわけではありませんから。

 米国でも中国でも、消費者はそこまで高いサービス品質を期待していないので、新しいサービスを比較的容易に受け入れることができます。日本は過去30年の間に、企業に対して極めて高い品質を製品やサービスに要求する消費者文化が根づいているので、変わるのに時間がかかるのです。

 ただし、今は日本に再びチャンスが訪れていると思います。それが、次世代高速通信技術「5G」です。3Gで日本は世界のリーダーでしたが、4Gでは出遅れました。日本は今、5Gの展開を急速に進めようとしています。再び世界のリーダーになるチャンスはあると思います。