政府が社会保障改革の司令塔となる「全世代型社会保障検討会議」を9月に立ち上げた。人口が多い団塊の世代が75歳以上になり始める2022年を控え、支え手の拡大や年金、医療など幅広い分野の改革を議論する。年内の中間報告取りまとめに向けどんな点を重視するのか。検討会議のメンバーに就いた増田寛也元総務相に聞いた。

<span class="fontBold">増田 寛也(ますだ・ひろや)氏</span><br>1951年生まれ。東京大学法学部卒、旧建設省へ。95年岩手県知事に初当選し、3期務める。2007年から08年まで総務相。現在は野村総合研究所顧問のほか社会保障審議会会長代理、財政制度等審議会・財政制度分科会会長代理などを務める(写真:都築 雅人)
増田 寛也(ますだ・ひろや)氏
1951年生まれ。東京大学法学部卒、旧建設省へ。95年岩手県知事に初当選し、3期務める。2007年から08年まで総務相。現在は野村総合研究所顧問のほか社会保障審議会会長代理、財政制度等審議会・財政制度分科会会長代理などを務める(写真:都築 雅人)

これまで政府は消費税率の引き上げを柱とする2012年の「社会保障と税の一体改革」を推進してきました。安倍晋三首相は今回の社会保障制度の見直しをこの一体改革に続く大型改革と位置づけています。改めて、今なぜ本格的に社会保障改革を進める必要があるのでしょうか。

増田寛也氏(以下、増田氏):社会保障の2022年問題、2025年問題、2040年問題というキーワードを耳にしたことがあると思います。人口が多い団塊の世代が22年から75歳以上になり始め、25年にはこの世代の全員が75歳以上になります。

(写真:shutterstock)
(写真:shutterstock)

迫る「2022年」「2025年」問題

 75歳を超えると1人当たりの医療費・介護費は急増します。現状を放置すれば社会保障費が膨張し、現役世代の負担は一段と重くなるので、今のうちに手当てを考える必要があるのです。

 さらにその先の40年には団塊ジュニア世代も65歳を超え、高齢者数がピークに達します。政府の試算では高齢化の進展で40年の社会保障給付費は約190兆円と今より6割も増えます。また、現役世代の急減という深刻な事態にも直面することになります。

 夏の参院選が終わり、経済財政諮問会議、社会保障審議会(厚生労働相の諮問機関)や財政制度等審議会(財務相の諮問機関)など幾つかの政府会議でそれぞれ社会保障改革の議論を開始しています。そこに新たに全世代型社会保障検討会議を立ち上げ、全体を取りまとめる形で大所高所からこれからの社会保障のあり方を考えていくことには大きな意義があると思っています。

一体改革によって消費税率が10%まで上がり、一つの節目を迎えましたね。

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