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2018年3月期に20年ぶりの営業最高益を達成し、19年3月期もさらに営業利益を積み増したソニー。平井一夫前社長からバトンを引き継いだ吉田憲一郎氏が経営トップに就任して1年半が経過した。社内外の技術を取り込み、新たな事業をつくり出す道が見えてきた。

2019年10月28日号のケーススタディーでは、「技術のSONY」を取り戻すために動くソニーの今を追った(記事はこちら)。日経ビジネス電子版では、ソニーの技術戦略を担う幹部へのインタビューを公開する。研究開発部門トップの勝本徹専務(記事はこちら)に続いて登場するのは、事業開発プラットフォーム担当の御供俊元常務。スタートアップの投資や育成支援を統括する御供氏は、「技術開発の方向性は創業時代から変わらない」と語る。

御供俊元(みとも・としもと)ソニー常務
1963年生まれ。85年ソニー入社。30年以上にわたり知的財産部門に従事。2013年業務執行役員SVP、知的財産担当に。19年6月から現職。知的財産担当、事業開発プラットフォーム担当、中国総代表、Startup Acceleration部門長を担当(写真:吉成大輔、以下同じ)

御供さんは、知的財産部門が長く、現在では知財に加え事業開発のプラットフォーム担当としてスタートアップへの投資や育成も指揮しています。自身の立場からソニーにおける技術の重要性をどう見ていますか。

御供俊元常務(以下、御供氏):私自身はソニーに入社して30年以上になりますが、会社の基本的な方向性は変わっていないと感じています。吉田憲一郎が経営トップになって、研究開発した技術を丁寧に説明するようになりましたが、流れが大きく変わったわけではない。

 私自身は創業者と直接仕事をした最後の世代です。創業者の井深大さんと盛田昭夫さんは知財や技術に対するアンテナの感度がとても高かった。入社1~2年目で創業者の2人と直接仕事をさせてもらいましたが、現在進めている技術開発の立ち位置や外部連携に対する考えは当時と比べて違和感はありません。

常にいい技術を外から持ってきた

 ソニーは外から見るとウォークマンやプレイステーションなどの事例から垂直統合にこだわっているという誤解を外部に与えているのかもしれません。

 よく「他社との連携を嫌いますよね」とか「連携しないですよね」と言われますが、私自身はそういった認識はない。そういった商品も当然ありますが、ソニーが創業時に手掛けた業務用のテープレコーダーは安立電気(現アンリツ)、ラジオに使われたトランジスタも米ウエスタン・エレクトリックからのライセンスで実現しています。CDやDVD、ブルーレイなどの一連の光ディスクはオランダのフィリップスなどと共同で開発しました。私の業務経験上、常にいい技術を外から持ってくるのがソニーだと思っています。

経営トップである吉田憲一郎社長兼CEO(最高経営責任者)は、「仕込みが不足している」と話しています。知財担当として、同じ危機意識はあるのでしょうか。

御供氏:私から追加でコメントすることは少ないですが、やはり基礎研究は大事だということ。10年、20年と息が長い話なので、やり続けるかどうかは、経営状況に左右された面はあると思います。

 過去でいうと、磁気記録は基礎研究をずっと続けてきた結果、事業として花開きました。(現在は売却したが)電池や化成品もそうです。ただ、今後のビジネス拡大へソニーがやるべき基礎研究が何かを選定していく必要があるでしょう。