2018年3月期に20年ぶりの営業最高益を達成し、19年3月期もさらに営業利益を積み増したソニー。平井一夫前社長からバトンを引き継いだ吉田憲一郎氏が経営トップに就任して1年半が経過した。社内外の技術を取り込み、新たな事業を作り出す道が見えてきた。
2019年10月28日号のケーススタディーでは、「技術のSONY」を取り戻すために動くソニーの今を追った(記事はこちら)。日経ビジネス電子版では、ソニーの技術戦略を担う幹部へのインタビューを公開する。1人目は、R&D(研究開発)担当の勝本徹専務。「部門間の協力関係は整いつつある」と語る。

1957年生まれ。82年4月ソニー入社。2004年デジタルイメージングカンパニーFR事業部長、12年業務執行役員SVP、メディカル事業ユニット副本部長、13年ソニー・オリンパスメディカルソリューションズ社長を経て、18年ソニー執行役EVP、R&Dプラットフォーム担当、メディカル事業担当に。18年常務を経て、19年6月から現職。R&D担当、メディカル事業担当、R&Dセンター長などを兼務。(写真:吉成大輔、以下同じ)
2018年4月にソニーのR&D(研究開発)のトップに就任して1年半が経過しました。現在のソニーにおける「技術」の位置づけは。
勝本徹専務(以下、勝本氏):コーポレートでのR&Dの役割は、かつてはテレビやカメラなどのエレクトロニクス商品やイメージセンサーを中心とする半導体の性能向上などへのウエートが高かった。特に業績が悪化していた時期は、直近の商品力向上にR&Dを振り向けていました。短期的な成果に貢献する必要があったわけです。
私自身、業績が回復した時点で、R&Dトップとしての打診を受けました。その際に吉田憲一郎(現社長兼CEO=最高経営責任者)、そして平井一夫(現シニアアドバイザー)の2人から頼まれたことが大きく2つあります。
1つが、利益を出せる体質になった今だから中長期の仕込みを強化してほしいということ。もう1つがR&Dをエンターテインメントやゲーム、金融などを含めてコーポレート全体へ展開してほしいということです。これには新規ビジネスの開拓も含まれます。後は海外により軸足を置いてほしいとも要望されました。
大崎と厚木の研究所を一体化
R&D担当就任後の18年7月に「R&Dセンター」を設立しました。吉田社長らの要望に対して、具体的に何を変えたのでしょうか。
勝本氏:まず、エンタメや金融も含めてR&Dを進めていくために、研究開発する領域ではなく、実用化までの時間軸で3つのレイヤーに分けました。基礎開発や研究など実用化に時間がかかる基盤技術を手掛けるレイヤー、それらを束ねてプラットフォームやシステムにくみ上げるレイヤー、新規ビジネスを含む全社の事業に3年くらいの期間で貢献できる統合技術のレイヤーです。
さらに現在では、ソフトウエアやシステムの研究開発を手掛けていた大崎(東京・品川)と、材料やデバイスを手掛けていた厚木(神奈川県厚木市)で分かれていた研究開発部門も統合してフラットにしています。材料、デバイスからシステム、ソフトウエアまでを同じフィールドの中で緩やかに結合しているような状態です。エンタメでも金融でもプロジェクトを柔軟に発動して人材を自由自在に集められるような体制にしています。
かつてはエンタメや金融で技術はそれほど……
勝本氏:求められていなかった。
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