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サッカー、Jリーグの村井満チェアマンと新日本プロレスのメイ社長が初対談。2人は外部からそれぞれの組織に加わった点で共通している。「外様」が活躍するための条件について意見を交わした。(上「日本発コンテンツ、海外で勝てる」は10月31日に掲載)

日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)の村井チェアマン(左)と新日本プロレスリングのハロルド・ジョージ・メイ社長(写真=栗原克己)

それぞれ海外への発信に取り組んでいます。どうしたら日本のコンテンツをこれまで以上に海外に発信できるでしょうか。

メイ:ユニークさをどれだけアピールするかだと考えていますが、同時に官民一体となって取り組むことが大切だと思います。

 私は現在の仕事以前にはずっとものづくりの業界にいました。つまり、扱うのは実際に手に取ることのできる「モノ」だったわけです。これに対して、サッカーもプロレスも「コト」、つまり体験を売っています。

 私の見たところでは、マクロ的に言って日本のGDP(国内総生産)はまだ6割ほどがモノであり、サービス業を含めてもコトは4割にとどまっています。そして、この比率が米国では逆になっています。私はもっと日本経済がコトの方向に動くはずだと思っているし、スポーツは国境を越えられるコンテンツの一つではないかと考えています。そういう成功例の一つをプロレスでつくりたいし、グローバルな可能性があると思っています。

米国に比べて日本のバックアップは少ない

 モノからコトへと経済がマクロ的に動いているにもかかわらず、コトについては政府の協力をほとんど聞いたことがありません。モノづくりならば政府はいろいろなサポートをしています。しかし、コトについてはアニメなど一部に「クールジャパン」政策などの動きがあるものの、まだまだ少ないと思います。日本にグローバルに通じる成功例が少ないのもこのためだと思います。

 米国では映画産業、音楽産業に政府のバックアップがあります。日本でもコトづくりは重要な産業であり、人材を雇用しているし税金も払っているのだから、政府と民間の協力体制が大切だと思います。

村井:海外と交流・発信していくとき、大きな障壁となるのが言語の問題です。クラブが世界に発信していくとき、例えばスペインのクラブであるレアル・マドリードやFCバルセロナでは、世界中に多言語で特設サイトを用意してコミュニケーションしています。しかし、Jリーグの55クラブが世界にダイレクトにつながるには、まだまだ言語の壁があります。Jリーグが多言語化にもっとかじを切ってコミュニケーションスキルが高まれば、世界にもっと受け入れられると思います。個々のクラブがすべてに取り組むのは難しいので、そこにJリーグの役割があると思っています。

 Jリーグ自体について言えば、日本語のフェイスブックのフォロワー数はこのところそれほど変わりません。一方、英語版やタイ語版のユーザー数は大きく増え、日本語版のユーザー数よりずっと多くなってきています。タイ語のフォロワーは47万人ほどいます。

メイ:言葉の問題は間違いなくあります。新日本プロレスの場合、選手のツイッターでの発信は原則として日本語です。このため、どれだけいいことをつぶやいても、英語に直すとニュアンスが通じないと思うところもあります。

 考え方も違います。例えば、日本語で相手に「ではこれを考えておきます」と言うのはもうノーと同じことですが、英語の「I will think about it」は非常にポジティブであり、検討するというニュアンスです。微妙な差ですが、ここには文化の壁があります。

 マーケティング的にも日本人に響くものと外国人に響くものが違います。こうした点が分かるかどうかが重要なポイントだと思います。特徴を伝えるための啓発活動も必要で、そのためには現地の体制を整える必要があります。