さらに、小売りの新しい現場を見るということで、ワシントン州シアトルで、アマゾンGOにも行かれました。

江上氏:アマゾンGOは、スマートフォンにアプリをダウンロードして、入店時にゲートにかざさないと入れません。またクレジットカード決済なので、最初から客を選別しているという印象を受けました。

 日本ではコンビニというと常に人がいて、それが安心感にもつながっています。アマゾンGOでは、商品を並べる店舗スタッフがいましたが、レジがなく会計をせず外に出られるので、店員との接触がない。やはり違和感がありました。

 別に店員の人と触れ合いたくて買い物に行くわけではありませんが、アマゾンGOで無数のカメラやセンサーでチェックされながらの買い物には、いわゆる買い物の楽しさというものはあまりないように感じました。

アマゾンGOの店舗の入り口。さながら駅の改札を通るときのようにスマホをかざしてチェックを受けないと入店できない(ワシントン州シアトルで)
アマゾンGOの店舗の入り口。さながら駅の改札を通るときのようにスマホをかざしてチェックを受けないと入店できない(ワシントン州シアトルで)
商品が少なくなると店舗スタッフが補充する(アマゾンGOの店内で)
商品が少なくなると店舗スタッフが補充する(アマゾンGOの店内で)
天井を見上げると無数のセンサーやカメラが並ぶ
天井を見上げると無数のセンサーやカメラが並ぶ

小説『二人のカリスマ』の中には、「アメリカ」という章もあり、日本の小売りの経営者がアメリカの店舗から多くを学び、ヒントを得たことが書かれています。

江上氏:今は、何でもネットで買い、店には買い物に行かないという消費者も増えました。こうした傾向に対応する必要はありますが、アメリカを見て、店づくりにもまだまだ工夫の余地もあるし、顧客に合わせたサービスなど、リアルな店にも、できることはあると感じましたね。

 今回は書店にも行ったのですが、アマゾンの台頭で経営難に陥った書店が、読書イベントなどで息を吹き返したという話も聞きました。

 戦後、アメリカを視察した日本のスーパーマーケットの経営者が、物の豊かさだけでなく、チェーン展開というアメリカのスーパーの経営手法や、買い物がしたくなる店づくりに大きな刺激に受けたであろうことを、実感する取材ができました。

*インタビュー(下)に続きます。

『二人のカリスマ』(スーパーマーケット編、コンビニエンスストア編)、各1600円+税 (日経BP)

 作家・江上剛氏が実在の人物にヒントを得て描いた流通ビジネス大河小説

 戦後の焼け跡から出発。一商人としての気概を持ち、スーパーマーケット・フジタヨーシュウ堂を全国チェーンへと展開した藤田俊雄。そして、周囲の反対に怯まず、日本でコンビニエンスストア・アーリーバードを展開し、1万店を超す規模にまで成長させた大木将史。二人の男は日本の小売業の歴史を大きく切り開いていく。だが、経営者としての最後は、対照的だった。

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