インタビューに対し、「(温暖化対策について)現在、痛みを感じるようなことであれば、本気の度合いも違うのでしょうけれども」と、真鍋氏は話した
インタビューに対し、「(温暖化対策について)現在、痛みを感じるようなことであれば、本気の度合いも違うのでしょうけれども」と、真鍋氏は話した

気象が変わるということは、農業や食料問題などにも影響があるということですね。

真鍋 土壌水分量が大きく変わります。われわれのシミュレーションでは、中低緯度の半乾燥地帯、いま穀倉地帯と呼ばれているところで、特に夏の間、土壌の乾燥が進むという結果が出ています。たとえば、中国の北東部なんかでは10~20%土壌水分が減少するわけです。土壌水分量の変化の影響を極力抑えるためには、治水や灌漑(かんがい)といったウオーター・マネジメントが重要な問題になってきます。ただ、これをあまり強調しすぎると、ばらまき行政の口実にされかねないですね。

こうした温暖化についての研究成果は、気候変動枠組条約締約国会議(COP)などの国際会議の土台になるわけですね。

真鍋 科学的な議論抜きに温暖化対策は検討できないと思います。そのうえで、温暖化が本当であることはほぼ確定しているとして、問題はそれにどのように対応するかです。温暖化を防ぐためには、どのくらい掛かるのか、たとえば自動車の燃料を全部エタノールに変えるとすれば、どのくらい掛かるのかとか。対応策を実行に移した場合に、われわれが払う犠牲はどうかということを考えなければいけません。

先ほどのお話のように、地域によって受ける影響に差があるとすれば、国際合意は簡単ではないですね。

真鍋 温暖化がものすごく進んだときに、われわれのまわりの自然も大きく変わると思います。トラだとかゾウだとかライオンだとか。あるいは身の回りの植物も、いま知っているものが、かなりなくなってしまう。こういうことを容認するかどうかでしょう。CO2の発生をなんとしてでも阻止して、いまある自然を守ろうと考える人もいるでしょうし、自分の生活、収入が大事だとする人もいるかもしれない。極端なことを言えば、南の島が沈むなら、海の上に人工の島を造ればいいじゃないかという意見だってあるでしょう。こうなってくると、マーケットメカニズムで決められるものじゃありませんし、最終的には政治判断せざるを得ないのではないでしょうか。

温暖化防止のためには、影響がどうなるのか、しかも長期のスパンで考えないといけない。

真鍋 温暖化問題というのは、自分の生きている間はまだ大したことにならないだろうと、思っているのではないでしょうか。自分が死んだ後のことまで心配できる余裕を持っている人がどのくらいいるか――。現在、痛みを感じるようなことであれば、本気の度合いも違うのでしょうけれども。

 僕はCO2の収支の専門家ではありませんけれども、たとえば、いまのCO2濃度の2倍に抑えようとすると、ものすごい努力をしなければならない。しかも、いろいろな国際会議は開かれるけれども、結局、その深刻さは各国では理解されない。

 僕の印象としては、温暖化というのは、どんどん進んでいくんじゃないかと思います。

(日経エコロジー2000年11月号のインタビューを再掲した)

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