北極海での昇温の激しさなど、温暖化の影響には地域差がありそうですね。

真鍋 いろいろなシミュレーションを行っていますが、高緯度地域の影響が大きくなります。ロシアやカナダでは他のところに比べて、気温がドンと上がる。しかも冬に大きく上がるわけです。そうすると、作物の生育期間が延びますし、生産性も上がる可能性が高い。永久凍土が解け始めるという難しい問題もありますが、ロシアやカナダでは悪いことばかりでなく、温暖化がプラスに働く面もありそうです。これに対して、南の島では水没の危険が出てきます。地球全体で見るとマイナスだと思いますが、場所によってはプラスになる可能性もあり、利害が錯綜(さくそう)するわけです。

影響の出方に差があるとなると、国際調整は難しくなります。

真鍋 温暖化の場合は、オゾン層の破壊と違って、それが必ずしも有害であるということがはっきり言えない。ここが国際的な協力が簡単には行かない一つの理由になっていると思います。しかも、温暖化のメカニズムは複雑です。たとえば、石炭を燃やすと酸性雨の原因となる二酸化硫黄(SO2)が発生します。ところが、このSO2は対流圏の下部にたなびいて、太陽の光を反射します。つまり温暖化効果を緩和する可能性もあるわけです。ですから、温暖化だけではなく環境問題全体として考えないといけないでしょう。

最終的に決めるのは人間の意思、自然を守るか、生活を守るかが問われる

最大のCO2排出国、米国(当時)の対応が十分でないと温暖化対策は進みません。

真鍋 米国に30年以上も住んでいますから、米国人の考え方というのも理解できます。米国が温暖化問題に淡泊なのは、発展途上国との間に不公平感を感じるからです。たとえば、北米自由貿易協定(NAFTA)のもとに、米国と国境を接するメキシコ側に、新しい工場がどんどん建ちました。メキシコは大気に対する規制が米国に比べてはるかにルーズです。賃金の安いメキシコ人の雇用が増え、米国人の雇用が減る。しかも、国境を接する工場から有害物質がどんどん出される。大気だけではなく水質汚染もひどい。米国人は自分たちが犠牲になっているという意識なんです。もちろん発展途上国の側にも言い分があります。

温暖化が進むとして、気温上昇によってどのような変化が現れそうですか?

真鍋 これは実は難しい問題です。台風なんか増えそうな気もしますが、必ずしもそうとは言いきれないんですね。かえって台風が弱くなるという結果も出ています。気温が上がると海洋などからの蒸発量は増えますから、いわゆる熱帯低気圧は、いまよりも増えて、雨はたくさん降ります。だから洪水なんかは増えますね。最近、日本では梅雨の末期の集中豪雨が、以前よりも強く出ているような気がするんですが、温暖化の影響だという証拠はいまのところ見つかっていません。

 ほぼ確実に言えるのは、21世紀の終わりには、地球全体の平均で7~8%降水量が増えます。ここで問題になるのは、雨の降りやすい地域に、いまよりももっと大量の雨が降る可能性が高いということです。場所によっては雨が大量に降る地域が出てくる。絶対量にしたら、ずっと増えるわけです。いまでも洪水で困っているガンジス川やコンゴ川の流域、アマゾン川流域なんかに大量の水が集まるわけです。

■大気中のCO2が増加すると、大気中に熱がこもりやすくなる
■大気中のCO2が増加すると、大気中に熱がこもりやすくなる
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