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2018年以降、断続的に全国各地で発生する豚熱。写真は20年1月に感染が確認された沖縄県の養豚場(写真:共同通信)

 農林水産省は9月26日、群馬県高崎市の養豚場で家畜伝染病「豚熱(CSF)」に感染した豚が見つかったと発表した。国内での感染は今年3月に沖縄県で確認されて以来で約半年ぶり。すでに同じ養豚場で飼育している約5400頭の豚の殺処分が行われている。家畜伝染病に詳しい東京農工大学付属国際家畜感染症防疫研究センターの水谷哲也センター長に、半年ぶりとなった感染の背景や、今後の見通しを聞いた。

そもそも豚熱とは、どういう病気なのでしょうか。

水谷哲也・東京農工大学農学部付属国際家畜感染症防疫研究教育センター長兼教授(以下、水谷教授):まず基本的なところですが、豚熱は以前は「豚コレラ」という名称が使われていましたが、人間が感染するコレラとはまったく別物で、豚やイノシシがかかる病気です。恐らくですが、下痢などの症状がコレラと似ていたところがあったので、豚コレラという名称が使われたのではないかと言われています。人間に感染することはありません。

水谷哲也(みずたに・てつや)氏
東京農工大学農学部附属国際家畜感染症防疫研究教育センター長、教授。1994年北海道大学大学院修了。同大学院獣医学研究科助手、国立感染症研究所主任研究官、国立がんセンター研究所ウイルス部研究員などを経て現職。専門はウイルス学

 豚熱ウイルスが豚の体の中に入って感染すると、体内でウイルスが大量に増え、発熱や下痢の症状が出ます。場合によっては20日以内に死亡する例もありますし、数カ月にわたって発症と回復を繰り返してそのうちに死亡してしまうケースもあります。妊娠している豚に感染すると胎児感染を起こし死産や流産となってしまいます。

 日本での初めての確認は1887年と非常に古いのですが、約50年前に豚へのワクチンの接種が始まり、1992年を最後に感染の報告はありませんでした。豚熱は日本では「過去の病気」とみられていたのですが、2018年9月に岐阜市の養豚場で26年ぶりに感染が確認され、その後も全国で報告が相次ぎました。

どのように感染するのですか。

水谷教授:感染した豚のよだれやふん尿などに含まれたウイルスが口から入ることで感染します。餌などとともに体内に取り込まれるのです。豚舎の中は今の言い方をすれば、まさに「密」に近い状態であることがほとんどですので、ほかの豚との接触機会は多く、1頭が感染するとすぐに広まってしまうのです。

先ほどおっしゃられたように18年に26年ぶりに国内感染が確認され、97農場で16万頭以上の豚が殺処分をされましたが、その後感染例の報告はありませんでした。しかし9月26日に群馬県の養豚場で国内では約半年ぶりに感染が報告されました。とすると、今回のウイルスはどこかから持ち込まれたものなのでしょうか。