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2019年6月末時点で債務超過に陥るなど、経営危機が深刻化するジャパンディスプレイ(JDI)。今年4月に発表した金融支援の枠組みは二転三転。8月には、いったん中国ファンドの嘉実基金管理(ハーベスト・ファンド・マネジメント)グループと香港ファンドのオアシス・マネジメントで構成する企業連合「Suwaインベストメントホールディングス」から最大800億円の金融支援を受ける契約を交わした。

だが、臨時株主総会前日の9月26日、500億円強を出資予定だったハーベストが離脱。翌27日の臨時株主総会では枠組みを維持したままハーベストとの交渉を継続することを理由に、金融支援や社長ら役員の選任案などの議案が可決された。

臨時株主総会での決議を経て、JDIの社長兼CEO(最高経営責任者)に就任したのが菊岡稔氏。新社長としてどうJDIを立て直すのか。決意を語った。

菊岡 稔(きくおか・みのる)
1986年4月、日本興業銀行(現みずほフィナンシャルグループ)入行。92年、米ニューヨーク州弁護士資格取得。その後、日東電工経営企画部部長、日本電産常務執行役員などを経て、17年4月にJDI入社。18年10月、執行役員財務統括部長、19年5月常務執行役員CFO(最高財務責任者)。同9月27日付で社長兼CEO。(写真:吉成大輔、以下同じ)

金融支援の枠組みが大きく揺らぐ中、9月27日の臨時株主総会での決議を経て社長兼CEO(最高経営責任者)に就任した。現在の率直な感想を聞きたい。

 これまでジャパンディスプレイ(JDI)は、(直近の緊急登板だった月崎義幸氏を除くと)CEOが2年に一度のペースで、しかも社内ではなく社外の力学で代わってきた。

 私自身は2017年4月にJDIに入ったので、ちょうど2年半になる。自分なりにこの会社のいい面、悪い面を知っているつもりだ。いきなりCEOに就任した方に比べると、その経験は大きいと思う。2年半いながらもしがらみが少ない私がCEOになることで、社内のいい面と社外のいい面を融合して頑張りたいと思う。やりがいもあるし、責任を感じている。

社長に就任してまだ数日だが、社内で従業員にメッセージは伝えたのか。

 10月3日の昼に、自分の思いを部長クラスには伝えた。話した1つが、先ほどの2年半いる強みを生かしたいということ。そして、私は金融での経験が長く財務のエキスパートだと思われがちだが、(日東電工や日本電産など)事業会社にも15年以上いて技術者としてではないが事業に寄り添ってきたとも話した。

 そして、JDIはこれまで官民ファンドのINCJ(旧産業革新機構)などの支援を受けており、甘えの構造があったとも伝えた。赤字はいいはずがないのに慣れきっている。9月までに(人員削減などの)構造改革はやりきったので、きちんとトップラインを確保して運営できれば下期の黒字化はできる。それを定着させることで、社員に自信を持ってほしいとも話した。

ハーベストは必ず残るのか?

臨時株主総会の前日である9月26日に、JDIはハーベストから「ガバナンスの見解の不一致」を理由に金融支援を見送る通知を受けたと発表した。交渉を主導した立場として、改めて経緯を聞きたい。事前に異変を察知できなかったのか。

 ハーベストがSuwaに必ず残る前提で進めていいかどうかという思いは、この数週間、抱いていたのは確か。だが、結果的に通知が来たのは直前だったのも確かだ。

 あのタイミングでは私自身は取締役会のメンバーではなく、議案を提案する立場だった。26日の取締役会ではSuwaの枠組みの主要メンバーがハーベストという前提で議案を出している以上、そのまま臨時株主総会で議案を諮っていいかどうかの議論があった。社内外から議論が出て、両方の意見があったが結果として臨時株主総会に臨もうという意見でまとまった。