2019年7月、2期目に入った遠藤俊英・金融庁長官が日経ビジネスのインタビューに応じた。金融庁の金融審議会において年金だけで95歳まで生活するには「夫婦で2000万円不足する」と指摘した報告書が物議を醸し、その後に事実上撤回した「老後資金2000万円不足問題」のほか、多くの金融商品で不適切な販売が明らかになっている「かんぽ生命・ゆうちょ銀行問題」、さらには地域経済の縮小を背景に低金利で経営が苦しい「地方銀行経営」についてまで、山積する課題への対応を聞いた。

金融庁長官として2期目に入りました。どんな取り組みを進めていますか。

遠藤俊英・金融庁長官(以下、遠藤):1期目でやりきれなかった課題は多くあります。例えば、金融庁の若手を中心とした職員のコミュニケーションのレベルをもっと上げることです。私自身、意識してひと月に1度、長官として私が何を考えているかを話し、職員と討論しています。さらに、庁内で職員10人以内の少人数グループを作り、その中でリーダーを決めて、リーダーを中心にグループメンバーで1対1のミーティングを開いてもらっています。我々は民間金融機関の担当者と直接話をする仕事ですから、コミュニケーションは非常に大切です。こうした取り組みは、対外的な仕事で有益に働くと考えています。

<span class="fontBold">遠藤俊英(えんどう・としひで)氏</span><br> 金融庁長官。1982年東大法卒、同年大蔵省(現・財務省)入省。金融庁証券取引等監視委員会特別調査課長、同庁監督局銀行第一課長、同局審議官、検査局長、監督局長を経て、2018年7月から現職。60歳。(写真:吉成大輔、以下同じ)
遠藤俊英(えんどう・としひで)氏
金融庁長官。1982年東大法卒、同年大蔵省(現・財務省)入省。金融庁証券取引等監視委員会特別調査課長、同庁監督局銀行第一課長、同局審議官、検査局長、監督局長を経て、2018年7月から現職。60歳。(写真:吉成大輔、以下同じ)

収益基盤の弱い地域金融機関の経営改善は、金融行政の課題の一つです。

遠藤:地域金融機関の経営問題は昔からあり、最近出てきた話ではありません。我々は、金融機関に対して、取引先企業に融資をする際は将来の収益性を考慮する「事業性評価」にもっと重きを置くべきだ、などと以前から言ってきました。つまり、金融機関は金融仲介機能を発揮して、リスクを取って企業に対する目利き力をもっと発揮しないといけないということです。

 しかし、このように我々が言い続けてきたことを金融機関は本当に正面から受け止めて、実践しているかどうかについては、はっきり言って疑問です。なぜ動きが遅いのか。一言で言えば、金融機関が「経営」というものをしっかりしていないからだと思います。

金融庁の行政方針を連呼するだけの銀行はいらない

8月に発表した今事務年度(2019年7月~20年6月)の金融行政方針では、地域金融機関に対して「確固たる経営理念」を確立する重要性を強調しました。

遠藤:経営理念について、我々はフワフワしたことを言っているわけではありません。事業を行うその地域で「金融機関としての存在意義を具体的に考えてください」ということです。その地域で会社の歴史はあるのかもしれませんが、歴史があるだけでは存在している意味はありません。

 どのような形で地域金融機関としての存在意義が認められ、地域経済を支えていくことが地域の方々に求められているか、もっと考えてほしい。そして、そのためには自分たちの金融機関をどういう形で動かしていけばいいのかという経営理念を現場に具体的に伝えてほしい。

 経営陣は現場の「腹に落ちる」ような経営理念の具体化を意識して経営すべきです。金融庁が行政方針に書いている言葉を連呼することではなく、自分たちが地域でどういう役割を果たすべきかを、自分たちで考え、自分の言葉で語れることが重要です。

今年4月に中小・地域金融機関向けの監督指針で、収益が悪化する金融機関に対して業務改善命令などを出すことができるよう早期警戒制度の見直しも行いました。

遠藤:また金融庁が上からものを言おうとしているのかと思われるかもしれませんが、それは違います。この制度の基本は、地域金融機関自身が経済状況をどう分析し、自分たちのビジネスモデルの将来をどう見ているのか、という議論をすることです。

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