関西に地盤を置く食品スーパー、関西スーパーマーケットを巡る買収合戦が過熱している。8月末にエイチ・ツー・オーリテイリング(H2O)が子会社化を発表するや否や、首都圏地盤のオーケー(横浜市)がこれに反発。TOB(株式公開買い付け)を行う意向を示した。オーケーの示した買収案は、関西スーパーの上場来高値である1株当たり2250円でTOBをするというもの。なぜ、オーケーは関西スーパーに固執するのか。買収劇の背景について、オーケーの二宮涼太郎社長に聞いた。

オーケー代表取締役社長。1974年生まれ。神奈川県出身。97年東京大学文学部卒業後、三菱商事入社。2015年にオーケーへ出向し、経営企画室長。16年1月に執行役員30%成長戦略室長兼店舗開発本部長。同年6月より現職。
オーケーから出されたニュースリリースによれば、21年6月に買収提案を行ったとありますが、そもそもなぜ今、このタイミングでの買収提案だったのでしょうか。
二宮涼太郎氏:20年、21年と続いたコロナ禍で、スーパーマーケット業界は「食のインフラ」と消費者に認知していただいたようで、需要がかなり高まっています。とはいえ、この業界の状況を考えると、人口減少、少子高齢化といった社会情勢の変化に加え、電子商取引(EC)、ドラッグストア、同業他社との競争など、環境の厳しさは増すばかりです。
やはり、コロナ後の当社の成長、業界の未来を考えると業界再編は避けて通れないことだという思いがあります。
なぜ関西スーパーが買収提案の対象となったのでしょうか。
二宮氏:話は1980年代にまでさかのぼります。当時の関西スーパーは業界の先駆者的な存在でした。当社は関西スーパーにスーパーマーケットの基礎を学ばせていただいたと言っても過言ではありません。当社を創業した飯田(勧・代表取締役会長)も関西スーパー創業者の故・北野祐次氏にお世話になって、オーケーの社員は何人も研修させていただいたと聞いています。時には売り場の作りについて、北野氏に関東まで来ていただいて指導を受けたとか。そうしたご恩があって、関西スーパーとは何かご一緒したいと思っていたのです。
心情的な面のお話ですが、ビジネス的に見て、関西スーパーの魅力はどこにあるのでしょうか。
二宮氏:関西スーパーは現在64店舗ですが、常連客も多くついています。そうした部分は大切にしながら、一方でオーケーの魅力をそこに加えたい。1店舗当たり、面積当たりの売り上げは当社と関西スーパーで大きく異なります。我々のスタイルを取り入れて、既存のお客さんに加えて、新規顧客も開拓して売上高を向上させて、関西スーパーの企業価値の向上につなげたいと考えています。
オーケー流 押し付けるつもりはない
関西スーパーの魅力の1つは大阪、兵庫を中心とした店舗の好立地だと思います。買収できればある意味、そうした出店にかかる時間は節約できると思いますから「時間を買う」というのも1つの目的であるのでしょうか。
二宮氏:そうですね。当社がゼロから出店することと比べれば、関西スーパーが築いてきたことには当然魅力を感じています。
買収によって「数年内をめどに、関西スーパーの1坪当たりの年間売上高は現状比3割増が見込める」と主張しています。この数値の根拠は。
二宮氏:社内で検討して、手堅く見積もってもここまでは伸ばせるということで、この数値になっています。
「関西スーパーは課題だらけだよ」と指摘しているようにも読み取れますが。
二宮氏:関西スーパーの今の経営手法でここまで成長されたところに、別の営業スタイルを組み合わせられるという意味です。
関西スーパーには特売があります。一方、当社は高品質・エブリデーロープライス(EDLP)を掲げています。競合の特売価格を我々の定番の売価にできることを目指しているのです。そうした営業施策を、対話を通じて、導入していただくということですね。商品で言えば、オーケー専用の留め型商品(販路限定品)なども関西スーパーに紹介していきたいと考えています。ただ、関西スーパーの屋号を変えるつもりはありません。
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