動画配信サービスはゼロサムの市場ではない
既存テレビとの差は何だと思いますか?
ピーターズ:ネットフリックスとテレビ局はモデルが基本的に違います。テレビは広告依存で番組のスロットが30分、60分というスロットの中でできるだけ多くの視聴者を獲得する必要があります。
一方で、ネットフリックスはそういった制約がありません。私たちはつくりたいと思うコンテンツをつくり、ユーザーに直接届け、その中で成長することができる。テレビ局にあるような足枷(あしかせ)がないというのが一番の違いでしょう。
ただ、ネットフリックスはドラマシリーズに強みを持っていますが、テレビ局はスポーツやニュースなどの強みがあります。まさに牙城です。そこでは本当に素晴らしい仕事をしていると思います。
今後、「Apple TV+」や「Disney+」が動画配信サービスを開始します。ストリーミング市場の競争環境は激化すると思いますが、それについてはどう見ていますか。
ピーターズ:競争はユーザーにとっていいことです。競争があるからこそ、ネットフリックスはよりよい存在になっていく。より最高の人材を採用し、最高品質の作品をつくっていく。そうすれば、最終的にユーザーが潤うというふうに考えています。
もう一つ強調したいのは、動画配信サービスという市場がゼロサムの市場ではないということです。
誰かが勝てば他の誰かが負けてしまうというような市場ではありません。実際に、ネットフリックスの会員を見ても、ネットフリックスの全ての作品を見たいということで見放題の契約を結ぶ方もいますし、本当に見たい2本、3本に絞り込みたいという方もいます。魅力あるコンテンツがあるかないかが重要だということです。
例えば、アップルさんであれば素晴らしいデバイスをつくっていますし、デバイスの流通網も持っています。ディズニーさんは素晴らしいIP(知的財産)とブランド力を持っています。それぞれがそれぞれに特徴を持っているということを考えれば、それぞれが違う形で競争するというのも理にかなっているのではないかと思います。
それぞれが共存するということでしょうか?
ピーターズ:そうです。ネットフリックスの会員の中にも、当社のサービスとディズニーのサービスの両方に加入する方はいるでしょう。結局のところ、そのお客様がどういうコンテンツを見たいと思っているのかに尽きると思います。
私たちが何をするにせよ、いかにユーザーを楽しませることができるかが一番重要です。それができなければ、ネットフリックスの事業は成功しません。毎月、会員の方々が払っている以上のバリューを提供することができるかどうか。そこが私たちの勝負だと考えています。この部分のみにフォーカスして、ユーザーの方々にコンテンツを提供していきたい。
ネットフリックスは通信環境が悪くても遅延なく動画コンテンツをユーザーに提供する技術力を持っています。動画配信技術における競争についてどう考えていますか?
ピーターズ:動画配信について、ネットフリックスは10年の歴史を持っています。動画圧縮技術にしてもそうですし、視覚体験という面でもそうですし、過去10年で最先端のテクノロジーを追いかけてきました。対ライバル企業という面で、それぞれの項目で進捗度合いは違うかもしれませんが、私たちの方が優位に立っていると思います。
もちろん、テクノロジーだけでなく、質の高いストーリーという側面、メタデータの側面、支払いの側面などもそうです。ネットフリックスのユーザーはグローバルなので、支払いなどをできるだけシンプルにすることも重要です。
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