ネットフリックスは2013年に配信した『ハウス・オブ・カード 野望の階段』以降、オリジナルコンテンツの制作に舵(かじ)を切りました。オリジナルコンテンツは会員の増加に寄与していると思いますか?

ピーターズ:ネットフリックスは100以上の国・地域でオリジナルコンテンツの制作を始めています。もはやローカルコンテンツと言っていいのか、インターナショナルコンテンツと言っていいのか分からない状況です。こういったネットフリックス独自のコンテンツを増やしていくことで、米国内の会員と共に、米国外の会員を増やしていきたい。ある国から生まれたコンテンツをその国だけでなく、グローバルで視聴してもらうことで、ビジネスの成功確率を高めていきたいと思っています。

ネットフリックスはそれぞれの国のローカルコンテンツを、独自のレコメンデーション(お薦め)機能によってグローバルなユーザーに届けることで、一つひとつのコンテンツの価値を最大化しています。

ピーターズ:ネットフリックスは「どこにもないようなユニークな作品をつくる」という作品ありきの発想で世界中の視聴者を引きつけています。優れたローカルコンテンツをつくり、世界に発信し、様々な国で会員を増やす。それができているからこそ、米国だけでなく、グローバルな観点で大きな投資ができているわけです。

 結果として、コンテンツ制作のコストは上昇していますが、それに見合う十分な価値があると考えています。オリジナルコンテンツの制作という当社の戦略は、経済学的に言っても、時代の流れを見ても、スマートな決定ではないでしょうか。

『全裸監督』はオーセンティックな本物のストーリー

8月8日に世界190カ国・地域で公開した『全裸監督』は日本発のオリジナルコンテンツです。こちらの評価はいかがでしょう?

ピーターズ:視聴率という観点で見て、最も日本で成功した番組だと言って過言ではありません。日本だけでなく、韓国、タイ、香港、台湾、ベトナム、シンガポールなどでもトップ10タイトルの1つになっています。

 高い評価を得ているのは、『全裸監督』という作品がオーセンティックな本物のストーリーであり、納得感のあるストーリーだったということに尽きると思います。こういった優れたストーリーの作品を高い品質でつくることができた。それが受け入れられている理由でしょう。

『全裸監督』の 主演の俳優には山田孝之を起用した(写真提供:Netflix)
『全裸監督』の 主演の俳優には山田孝之を起用した(写真提供:Netflix)
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AV監督をテーマにした『全裸監督』のような作品はネットフリックスだからこそつくることができたという声もあります。

ピーターズ:作品として何か語りたいと思っても、なかなか語ることのできないテーマはあるでしょう。でも、ネットフリックスであればできるんじゃないかと思ってくれるクリエーターはいると思います。ネットフリックスはグローバルに数多くの視聴者を持っていますので、ストーリーと監督をうまくマッチングできれば、グローバルで受け入れられる可能性は上がります。

 ただ、ストーリーが本物かどうかが全てです。『全裸監督』ではありませんが、園子温さんという素晴らしい監督と仕事がしたいというクリエーターは大勢います。彼は本当に素晴らしい監督ですが、園さんにお願いする価値のあるストーリーかどうか。その辺はわれわれの方で十分に吟味しなければなりません。

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