あそこの天丼が好きで、連載でしばらくお付き合い願ったことがあって。そうしたら「お客さんはワンコインの天丼を食べに来る。そこの味が第一命題なんだけど、一方でたまにはこれじゃないものを食いたいよ、というのもあって、そのバランスが生命線なんだ」と(てんや社長の「めしばな奮闘記」 「あなた、とんでもない場所に出店しましたね」)。

細山田:バランス調整ですね。僕、バランサーなんです、どっちかといったら。定番の「ぷよぷよ通」を発売当時の環境で遊べるものを最新ハードで提供する。それはちゃんとやります。でも新作でチャレンジもやる。それは「ソニック」などをやらせてもらっていたからこその知見が実はいろいろあったりするんです。「ソニック」の昔のメガドライブの2が好きだという人は、あれが最高なんですよ、もう。だから定番と新作の両方をIPホルダーはきちんと提供し続けるというのは絶対必要です。

そういう意味じゃ「セガもeスポーツを出したいんだけど、やりたい人いる?」と言うとき、はいと細山田さんが手を挙げるのは当然だったわけですね。

細山田:今、コアなeスポーツのプレーヤーを目指す人たちは、動画を見てそこに憧れて、すごく練習して、それでも「できない、できない」と悩みつつ、ゲームセンターやゲーム大会、ネット対戦に参加して、ゲームプレイ内外のコミュニケーションを通してだんだん上達していく。リアルに対人戦をやると全然違うんです、コンピューターとやるのとは。

 もちろん今はオンラインでもできるんですけど、結局、1人でやっているとどこかで行き詰まりが出てくる。対面でやったり、観客がいる状況でプレイしたりすると変わるんです。セガは昔からそこを提供している、サポートしているというところもあると思います。

2019年6月に行われた「ぷよぷよチャンピオンシップ」
2019年6月に行われた「ぷよぷよチャンピオンシップ」

ぷよぷよ界の「キングカズ」と17歳の戦い

「東京ゲームショウ」では、「ぷよぷよチャンピオンシップ SEASON2 TGS特別大会」が行われます(9月15日日曜日の午前10時30分から開催。優勝賞金は200万円)。おっさんとしては、ベテラン層の活躍を期待したいです。アクション系って絶対視力と反射神経がいい方がいいじゃんと思うじゃないですか。でも宮崎さんによれば(前編参照、こちら)若手とベテランが拮抗しているとか。年長者が食い下がれるというのは、何か理由があるんですか。

細山田:例えば20年以上プレイしている熟練の、くまちょむさんというプロプレーヤーがいるんですけど、彼はずっとぷよぷよを研究しているんですよ。それで戦法を急に変えるんです。普通、盤石なプレイスタイルができたら、もう研究をやめちゃってそれを使い続けるんですけど。

磨き込むでしょうね。

細山田:例えば新しいタイトルが出たときに、こういう戦法はどうかというのを結構繰り返し試す。だから常に優勝するわけではなく、その日の調子などで浮き沈みはあるんですけど、ある程度のレベルを長い年月保っていて。常に練習している。だからサッカーでいうと、カズみたいな立ち位置なんだろうなと。

おお、ぷよぷよ界のキングカズですか。

細山田:一方で高校生もいて、めちゃくちゃ強いんですよ。マッキー君という大阪の子なんですけど。たぶん若い子ならではなんですけど、1フレーム単位の違いとか、「色の組み合わせが分かる」みたいなことをSNSで言っていて、本人に直接伝えたことはないんですが、すごいんです。ゲームの仕様に関わっている開発者としては本来はあり得ないことをしれっと口にしているんですけど、彼を見ていると「もしかしたらあるかも」と思うぐらい。

まさにいわゆる若い子の反射神経や伸びしろの部分VSいわゆる熟練の戦い。というか、熟練で肉体の衰えを補える部分がある。

細山田:年齢でいくと37、8歳の人もいれば、下は17歳から20歳ぐらい。親子関係ぐらいの対戦が見えるというのは、スポーツとしてもなかなか魅力的ではないでしょうか。一般プレーヤーも参加できる「ぷよぷよカップ」では、小学生のプレーヤーが結構、善戦していましたよ。国体の文化プログラムの予選会場に行って、その場に遊びに来ていたプロプレーヤーに試合を申し込んで、そこで対戦。

小学生がプロに揉んでもらうわけですね。

細山田:対人戦をやると、めきめきうまくなります。僕は柔道をやっていたんですけど、学生の頃に社会人の方も交じって乱取りをしたり、昇段試験では自衛隊の人と対戦したりしました。ゲームではありますが、アスリート並みの練習や努力は必要で、今はほぼスポーツに近いような流れにはなっているのかもしれません。

 長い歴史の中にいる伝説のプレーヤーさんが何人かいるんですけど、そこを凌駕する若手の進出みたいなのがあって。ほとんどの大会ではプレーヤーでもあるプロによる実況解説が入りますし、これがみな個性的で面白いんです。ぜひ、大会を見に来ていただいて、そして「ぷよぷよ」を久しぶりに遊んでみてください。

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