サッポロビールは8月、米クラフトビールメーカー「ストーンブリューイング」を買収した。北米での製造拠点を得て、自社ブランドを強化する構えだ。国内では「黒ラベル」が好調な一方で「ヱビス」が軟調に推移。10月にはビール大手4社が足並みをそろえてビールを値上げする予定だ。成長期待の高い海外市場、そして値上げを控える日本市場の展望をどう描くのか。社長就任から1年半を迎える野瀬裕之氏に聞いた。

野瀬 裕之(のせ・ひろゆき)氏
野瀬 裕之(のせ・ひろゆき)氏
サッポロビール代表取締役社長 1963年生まれ。福岡県出身。86年九州大学経済学部経営学科卒業、旧サッポロビール(現サッポロホールディングス)に入社。2011年焼酎戦略部長、12年ヱビスブランド戦略部長、13年ブランド戦略部長。15年にサッポロホールディングス取締役戦略企画部長、19年同取締役常務執行役員営業本部長、20年サッポロビール取締役常務執行役員マーケティング本部長国内営業部門管掌を経て21年3月30日から現職

8月に米クラフトビールメーカーのストーンブリューイングを買収しました。「北米市場における製造拠点の強化」とのことですが、いつごろから買収を考えていたのでしょうか。

野瀬裕之氏(以下、野瀬氏):以前から米国で物流と生産の拠点を持ちたいと考えていました。2010年代までは日本と海外の工場から米国市場へ「サッポロプレミアムビール」を輸送してきましたが、物流費が高騰し続けています。ですから、M&A(合併・買収)で拠点を持つことを検討しました。現地工場の建設も考えましたが、完成までに3年ほど時間がかかってしまいます。

 サッポロビールは1984年に米国で現地法人を立ち上げています。当時から米国市場におけるアジア系ビールブランドの中ではシェア1位であり、同国への輸出が盛んだったのです。売り上げは順調に成長して、2006年にはカナダ第3位のビールメーカーだったスリーマンを買収。カナダとベトナムの製造拠点からも米国市場に出荷していました。

 物流費などの課題を解決するため、ストーンブリューイングの買収について具体的な話が出てきたのは21年の夏ごろですね。製造能力に余力があって、経験が豊富な企業。そして米国内ではカリフォルニア州とバージニア州と東西に製造拠点を持っている。同社の買収はベストな選択肢だったと思います。

ストーンブリューイングは米国のカリフォルニア州とバージニア州に製造拠点を持っている。買収によってサッポロビールは北米での製造拠点を確保することになる
ストーンブリューイングは米国のカリフォルニア州とバージニア州に製造拠点を持っている。買収によってサッポロビールは北米での製造拠点を確保することになる

ストーンブリューイングを買収することによって、同社の工場の稼働率を2倍に改善すると明言しています。現状の稼働率が5割以下と読み取ることもできますが、これだけ低水準な理由はなぜでしょうか。

野瀬氏:1996年にカリフォルニア州で創業したストーンブリューイングは、インディアペールエール(IPA)の「ストーンIPA」などで知られる会社です。順調に成長を続け、2014年には東海岸のバージニア州に工場を建設しました。もっとも、減価償却などで苦労していたそうです。確かに稼働率は5割に満たない水準となっていますが、サッポロのビールを製造すれば工場の稼働率も上がって原価を下げることができるでしょう。

買収の効果はいつごろから出てくるのでしょうか。

野瀬氏:サッポロのビール製造がすぐ始まるわけではありません。最低限の準備や訓練は必要ですから、23年7月以降、もしくは24年以降に大きな変化が生まれてくると思います。現時点で詳細は申し上げられませんが。

ストーンブリューイングの製品。クラフトビールの「ストーンIPA」(左端)が看板商品だ
ストーンブリューイングの製品。クラフトビールの「ストーンIPA」(左端)が看板商品だ

いずれにしても、米国が成長ドライバーとして、ますます重要になるのですね。

野瀬氏:今回の買収は大きなターニングポイントにはなるでしょう。米国もカナダもカントリーリスクが小さな国です。そして、日本と違って柔軟に値上げができる。国としての安定性を考えれば魅力的なエリアなのです。米国に比べて市場規模は10分の1ですが、カナダでもプレミアムなビールが売れています。

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