人材派遣大手のパソナグループは9月1日、東京にある本社機能を段階的に兵庫県の淡路島に移すと発表した。経営企画や総務、財務経理、広報などの約1800人のうち1200人を9月から2023年度末までに順次移す計画。新型コロナウイルスの感染拡大を契機に働き方やオフィスの在り方を見直す動きが広がっているが、パソナの決断に対しては驚きの声も上がる。南部靖之代表に計画の真意を聞いた。

<span class="fontBold">南部靖之(なんぶ・やすゆき)氏</span><br> パソナグループ代表。神戸市出身。関西大学工学部卒業。大学卒業1カ月前の1976年2月に「テンポラリーセンター」を立ち上げ、人材派遣事業を開始。93年社名を「パソナ」に変更。大阪大学大学院国際公共政策研究科客員教授。
南部靖之(なんぶ・やすゆき)氏
パソナグループ代表。神戸市出身。関西大学工学部卒業。大学卒業1カ月前の1976年2月に「テンポラリーセンター」を立ち上げ、人材派遣事業を開始。93年社名を「パソナ」に変更。大阪大学大学院国際公共政策研究科客員教授。

本社機能を移転する目的は何でしょうか。

南部靖之・パソナグループ代表(以下、南部氏):コロナ禍を機にいろんな思いが起こりました。

 1つは東京にすべての本社機能が集まっていることへの懸念です。新型コロナでは、1人でも陽性患者が出れば1フロアを閉める必要があります。感染が拡大すれば事業への影響が避けられません。ですから、本社機能を分散してリスクヘッジをする狙いがあります。

 加えて、経営者の立場で言うと経費節減の意味もあります。これまでは都心の高いオフィスの賃料を払って、従業員の交通費を払って仕事をしてもらっていました。しかし、淡路島であればオフィスの賃料を場合によっては10分の1に抑えられる。住居も東京のオフィスから30km圏の相場の5分の1くらいで借りられます。さらに交通費もそこまでかからない。

 自然豊かな環境で通勤ラッシュから解放されて働くという、心の豊かさにもつながります。

 パソナにはそれぞれの社員の知見を共有するシステムができていて、先輩が後輩に助言するといった社員間の仕事上のコミュニケーションが従来ほど必要ではなくなっていることに今回のコロナ禍で気付きました。それで思い切って決断したという側面もあります。

コロナ以前は考えていなかったのですか。

南部氏:コロナの前から、地震などの災害を含めた東京一極集中のリスクを解決する手段は地方にあると言ってきました。しかし、地方と東京には情報通信インフラなどの格差もある。そう簡単にはできないと考えていました。

南部さんはすでに淡路島に移っているそうですね。

南部氏:私は1月末ごろにここ(淡路島)に移りました。東京の本社には2月から数えて3回ぐらいしか行っていません。役員会議もリモートでできましたし、経営会議もここでやります。移る前まではさんざん人と会ってきましたが、ほとんど直接の対面はせずに済んでいます。

 僕は今、自由な時間もでき、人生を楽しんでいます。コロナは営業の在り方もマネジメントの在り方も変えました。私は神戸に自宅があるのですが、そこも先日売る契約をしました。9月末までには出ていかなければいけません(笑)。淡路島に移り住みます。

なぜ淡路島だったのでしょうか。

南部氏:まず淡路島で長年事業を手掛けてきたこともあり、ここには土地勘があります。

 さらに周辺には関西国際空港や伊丹空港、神戸空港、徳島空港と空港が4つあり、東南アジアに対するゲートウエーとしてグローバル化しやすい利点があります。大阪や神戸といった大都市とも近く、本州と四国を結ぶ通過点ということで人の交流も多い。県や市など地元の理解があるということも大きかった。