安倍晋三首相の辞任表明を受けて政局が大きく動き出した。後継の首相には誰が就くのか、今後の経済政策はどうなるのか。評論家の田原総一朗氏に聞いた。

評論家の田原総一朗氏(写真:栗原克己)
評論家の田原総一朗氏(写真:栗原克己)

安倍首相が辞任を表明しました。どのような印象を持ちましたか。

田原総一朗氏(以下、田原氏):安倍首相が辞意表明する前日、私は政府首脳や自民党首脳から「続投する」と聞いていた。それが突然の辞意表明となり驚いた。それでも記者会見を聞いてある程度納得した。第1次安倍内閣のときは最後に投げ出しという印象があったが、今回は1時間の記者会見を開き、これからどうするかについて話したからだ。体調が悪いことを理由にずるずる先延ばしにして国会を開かないより、ここで辞めることを表明したのはよかったと思う。

米国、中国との関係構築はレガシー

第2次以降の安倍政権の連続在任日数は、大叔父の佐藤栄作元首相を抜き、歴代単独1位となりました。なぜこれほど長く続いたのでしょうか。

田原氏:アベノミクスについてはいろいろ言われるが失業者は少ないし、有効求人倍率は高い。若者は自民党を支持しており、安倍首相の下では6回(国政)選挙をして6回とも勝っている。まずここが大きい。

 また、これは安倍首相のいいところであり、悪いところでもあるが、自民党の幹部たちに絶対に「ノー」と言えない。これは長続きにつながった面もある。「ノー」「ノー」と言い続けた小泉純一郎氏とは大きく違う。

安倍政権をどう評価しますか。

田原氏:安倍政権は長く続きすぎてはっきり言えば皆飽きているところがある。このためこのところは批判が強く悪いところばかりが目立つが、私は安倍氏は首相としてレガシーをいくつも残していると思う。

 1つは第1次安倍内閣で総理に就任してただちに中国を訪問したこと。当時日中関係は最悪だったが、安倍氏は戦略的互恵関係という発想からそれまで悪化していた日中関係を改善した。

 2つめは日米関係だ。東西の冷戦のときには日本は西側の極東部門のため、米国は日本を守る責任があった。ところがソ連崩壊で米国は日本を守る責任がなくなり、このままでは日米同盟は持続できないと(米国は)強く言ってきた。安倍内閣は安保法制を改正し、集団的自衛権の行使の容認にかじを切った。公明党との話し合いの中、集団的自衛権は全面的でなく部分的な形となったが、この改正によって米国からの不満は聞こえなくなった。

 残る課題は日米地位協定で、安倍首相は改定しようと動いていた。しかし、米国の国防総省が反対し、どうしようかというときにコロナ禍になった。安倍首相が退陣してもこれは重要課題であり、次の政権に引き継がれるだろう。

産業構造を抜本的に変える動き広がる

ポスト安倍はどうなるでしょうか。

田原氏:菅義偉官房長官が次の首相になるとみている。党内にアンチ菅はいないし、菅氏自身も好き嫌いがない。新政権は岸田文雄政調会長、石破茂元幹事長ら党内の有力者を入れる形になるのではないか。

 (安倍首相による)長期政権の後だが、自民党内はまとまっており、混乱することはない。新政権が発足後、何よりも早くすべきことは新型コロナウイルス対策だ。

経済政策がどうなるかについても注目が集まります。

田原:日本の産業構造を抜本的に変えようとする動きが政府内で起きている。雇用政策の見直しも含まれ、新卒の一括採用や年功序列、終身雇用の見直しにつながりそうだ。安倍首相が取り組もうとしていたが、菅氏が首相になってもこの動きは引き継がれるだろう。

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