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この5年、ヤフーをどう見ていたか。

 売却を決断した時のヤフーの代表取締役社長は宮坂学さん。昨今、話題に上ったアスクルの創業者・岩田彰一郎さんを含め、グループ企業のトップ全員がフラットに自由に様々なことを議論できるいい会社だと思った。長期的なビジョンについても一緒に議論できる、とてもいい企業文化だった。

 事業的にも、ヤフーという日本最大級のメディアとの相乗効果は大きいと考えていた。CRM(顧客関係管理)のデータとメディアは今後、必ず近づいていくと見ていたからだ。

 企業はCRMデータを基に顧客を分析し、よりよく知った上で最適なオファーをしていく時代に入っている。企業は生活者との直接的なコミュニケーションに加えて、メディアを通したコミュニケーションも必要になる。企業にとっても、生活者にとっても、メリットのある絵を描いていた。

 私が引き続き代表を務めていた時期、田代にバトンタッチした後も、基本的にはこの描いていた絵を実現しようと試行錯誤してきた5年間だったと思う。退任した後のヤフーの状況は外からの印象でしかないが、戦略が変わったのではないだろうか。シナジーマーケティングとして少し窮屈なところがあったかもしれない。

 今後、シナジーマーケティングが大きく羽ばたくためにはヤフーから出た方が良かっただろうし、その判断を受け入れてくれた現行のヤフー経営陣の方々にも感謝をしている。

ヤフーの戦略の変更というのは具体的にどういうことか。

 ヤフーの将来を客観的に想像すると、ソフトバンクグループの子会社として決済サービス「PayPay」を日本一にするビジョンで突き進んでいる。そうするとシナジーマーケティングが対象としている企業とは少しずれてくる。

 シナジーマーケティングの利用企業は実に多種多様だ。どのような業種業態でも対応でき、フルサービスでサポートできるのが価値だ。だが、PayPayの先にいる店舗に限定されてしまうとシナジーマーケティングとしての活動領域は狭まってしまう。CRMデータを通じて顧客と企業の関係を良くしようという我々の方向性と整合性を取りづらくなったとも言える。

ヤフーから離れたシナジーマーケティングの今後の戦略は。

 まず、シナジーマーケティングはペイフォワードという会社の傘下になる。シナジーマーケティングはこれまでと同様、CRMを中心としたデジタルマーケティングの会社として成長を続けていければと考えている。競合企業も次々と生まれている。企業のデータマーケティングをフルサービスで支援できる優位性を生かして成長を続けていきたい。

 一方で、新しい事業も手掛けていく。個人的にエンジェル投資家として出資している企業が2桁以上ある。ペイフォワードという会社の下に様々な事業を展開する企業がぶら下がる構図を考えている。企業向けサービスだけにとどまるつもりはない。個人を対象とした事業も展開していければ。再上場については完全にノープランの状態だ。

 ヤフーとの関係は引き続き良好だ。個人の信用スコアを算出する「Yahoo!スコア」事業も引き続きやっていく。

Yahoo!スコアの炎上はどう映っていたか。

 非常に残念だった。プライバシーは極めて重要だ。だが、あまりにも「リスクファースト」な考え方が日本にまん延しているように感じる。

 日本はまぎれもなく先進国だし、日本人自身、先進国だと感じている人が多い。だが、これは先人たちが築いてくれたもの。海外を回っていて感じたのは、日本がものすごい勢いで周りの国に後れを取り始めている事実だ。新しいものに対してやってみようというチャレンジ精神が失われて久しい。

 スコアも本来はより良いサービスを受けられるためのものだ。リスクばかりに注目が集まる風潮がこのまま日本でまん延し続ければ、20年後も先進国でいられる保証はどこにもないだろう。