今後の銭湯の課題はなんでしょうか。

 リニューアルには数千万円から億を超える費用がかかります。東京都の場合、設備投資に補助が出ますが、それにしても負担は大きい。それだけの投資をすれば、返済期間も20~30年と長くなります。当然、その期間中、事業を継続していけるかがポイントになります。事業継承の問題です。

 銭湯は家族経営が基本です。もし、子供が“家業”を継いでくれなければ、長期を見据えた投資はできません。そういう環境にない銭湯は結局廃業していかざるを得ない。廃業するにも、敷地がそれなりに高く売れて、マンションなどに建て替えられるところはまだいいです。ただし、そうでなければ、建物の解体などに費用がかかり、場合によっては大きな負担を強いられます。

 そんな中、出てきたのが、銭湯運営の請負業態です。高齢化で銭湯の運営がつらくなってきたオーナーに代わり、第3者が運営を請け負うのです。比較的若い人たちが関わっていて、人と接し、地域とコミュニケートしていける銭湯という事業に関心を持ってくれているのです。彼らは、イベントの展開やSNSでの情報発信にも積極的です。

 また、銭湯で働きたいという若い人も出てきました。銭湯に行くと、番台というかフロントを担当している若い女性を見かけるようになりました。そうした女性の中には単にパートとして働いているのではなく、「そのうちに自分で銭湯を運営してみたい」と考えている人もいます。

 一方で、請負で銭湯に関わりだした人たちと、従来の銭湯経営をしている人たちの間に意見の相違も出ています。例えば営業時間。東京の銭湯の多くは午後3時ごろから始めるところが多いですが、もっと自由な営業時間を設定したいという運営業者が、地域の組合との調整に手こずったところもあります。料金についても、東京都公衆浴場業生活衛生同業組合の組合員の銭湯は460円で上限規制されていますが、その自由化を求める声も徐々に大きくなっているようです。

 ここ数年で、銭湯の姿が変わり始めているのは確かですが、変われない銭湯もあります。都市部と地方では状況が異なるのですが、私としては東京の銭湯は少なくとも400件は残ってほしいと考えています。今も変化しつつある銭湯がその過程で、どう変わって成長していけるかを注意して見ていきたいと思っています。

この記事はシリーズ「インタビュー」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。