地域とフィットするという言葉が出てきましたが、設備の更新以外ににどんなことをしているのでしょう。
銭湯を地域のコミュニティーの拠点にしようという動きもあります。イベントを自ら開催したり、銭湯のスペースを貸して開催したりするのです。そうした活動で、地域や周辺の人たちの注目を浴びるようになり、その存在が改めて認識されるようになっています。
私が銭湯のデザインを手掛けるようになった20年ほど前は設計だけでなく、イベントの企画運営も一緒にやっていました。銭湯は密集した町中にありながらそれなりに広いスペースを持っています。せっかくリニューアルをするならこのスペースを活用し、少しでも認知度をアップしたいと考えて、周囲の人たちに向けたプロモーションとしてイベントを開催しました。その準備や告知・集客にかなりの労力を割き、苦労もしました。施主である銭湯のご主人は、それまでそうした告知・集客の経験がほとんどありませんので、私どもがその面でもお手伝いさせていただきました。
しかし、今ではTwitterやInstagram、Facebookなどが普及してきたため、告知効果が上がるようになっています。先ほど紹介した渋谷の改良湯さんでは、初めからイベントを恒常的に開くという前提で設計しました。男女別に分かれている脱衣場の仕切りを取ると、45平方メートルほどの一体的スペースが生まれます。

改良湯さんは2018年の年末にリニューアルオープンしましたが、初回のイベント以降、5~6回ほどイベントを開催しています。意外にも立地性と銭湯でのイベントという新奇性が話題を呼び、イベント利用の申し込みも多いようです。後継者となった若夫婦が中心となって運用の充実を図られ、私としては運用コンセプトとシステムの提案だけをお手伝いしました。
こうした地域のコミュニティースペースとして地域と連携する動きは多くの銭湯で行われ始めています。墨田区の御谷湯さんのように、さらに一歩踏み込んで、地域の福祉に貢献するため、バリアフリーや福祉型家族風呂などの設備機能を整えたところも出てきました。

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