リニューアルはどのように進めていくのですか
リニューアル設計時に大切にしているのはコンセプトです。ただ、設備を増やしかっこよくすれば、よいわけではない。デザインはそれを実現するためのものにすぎません。どんな銭湯にしたいのかという施主の思いが大事です。また、立地条件に合わせて何をしたらその地域にフィットするか、存在意義があるかを含めて施主と一緒に考えます。設計はコンサルティングでもあるわけです。リニューアルするからには、客数を倍には増やしたい。そういう意識で設計をしてきましたし、結果も出ています。
例えば、町田市の大蔵湯さんの場合、周囲にスーパー銭湯などが多い立地でした。それらはジェットバス、マッサージ風呂など様々な設備をうりにしています。それらと正面からぶつかることをしても仕方がない。そこで、のんびりと落ち着ける空間を提供するというコンセプトを設定し、設計をしました。具体的には大蔵湯の浴室では音が出る設備システムが一切排除されており、高/中/水という温度が異なる浴槽しかありません。また湯質にもこだわり、軟水を使用しています。湯空間と湯質をじっくりとシンプルに楽しんでいただくという趣旨の施設としました。

新宿区の栄湯さんは、近くにある哲学堂公園にちなんだコンセプトにしました。公園には孔子・釈迦・カント・ソクラテスを祀った通称「哲学堂」があります。そこで、その4人にそれぞれオレンジ、黄、紫、青のイメージカラーを当てはめ、それを光で表現することにしました。4人の哲学者をイメージした間接光に包まれる空間です。背景としての空間は白いタイルをベースとして自らを投影し、本来の自分を取り戻してもらうことを趣旨としています。地域の人に愛されている哲学堂公園とリンクした銭湯にしたわけです。

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